美容室では毎日大量の髪が廃棄されています。状態が良くて長い髪でさえ、ひとたび切られてしまえばゴミとして処理されるのが常です。せっかくなら、髪を寄付してサロンならではの社会貢献をしてみませんか?さらにドネーションサロンに登録すれば集客にも繋がります。ここ数年で認知度は上がってきましたが、まだまだ登録店舗は少なくサロン探しに悩むお客様は多いからです。そんな一石二鳥のヘアドネーションについて解説します。

ヘアドネーションとは

ヘアドネーションは欧米で始まったボランティア活動です。小児がんや白血病、脱毛症や不慮の事故などで髪の毛を失った子ども達に無償で医療用ウィッグを提供しています。ウィッグは完全オーダーメイドであり、これを作るのには人毛が必要です。ウィッグに使用される髪の毛は有志の方から寄付されたものを使っています。一般的にヘアドネーションと言う時は、この「髪を提供すること」を指しています。

ヘアドネーションの歴史は浅く、始まってからまだ10年と少ししか経っていません。しかし、徐々に世間から認知されるようになり、寄付数は年々増えているそうです。二階堂ふみや柴咲コウ、熊田曜子(敬称略)など、有名な女優やタレントもヘアドネーションをしています。著名な女性に留まらず男性でも人気YouTuberグループ「フィッシャーズ」のメンバーがヘアドネーションをしたそうです。影響力のある人々が自身のSNSで発信したことから口コミ等が広まり、ヘアドネーションは一般的なものとしてどんどん広まっていくでしょう。

しかし、ヘアドネーション団体に登録している美容院はごく少数です。全国に美容室は25万店舗以上ありますが、日本で一番初めにヘアドネーションを始めたJapan Hair Donation & Charity(通称 JHD&C/ジャーダック)に登録しているサロンはわずか4,255店舗しかありません。

未登録店舗でもヘアドネーション用のカットを行うことはできますが、手間がかかるので受け入れをしていないところもあります。人々の興味関心が高まる一方で、ヘアドネーション対応サロンの少なさに断念する人もいるのです。したがって、ヘアドネーションを導入すれば興味を持っているお客様を呼び込めるでしょう。

参考:J-CASTニュース「熊田曜子、髪ばっさりショートに ヘアドネーションで寄付…「ハンサム」「別人に見えました」」(2020/4/1)
参考:Real Soundテック「フィッシャーズ モトキが“ヘアドネーション”で丸坊主に 髪を伸ばしていた真意に感動広がる」
参考:厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例の概況」(pdf)
参考:Japan Hair Donation & Charity公式サイト

ヘアドネーションをするには

ヘアドネーションを導入するかどうかを決めるためには、どのように施術を行うのかを知る必要があります。そこで、ヘアドネーションが可能な髪の条件や、寄付するまでの流れについて説明していきます。

ヘアドネーションができる髪の条件

・切り口から毛先まで31㎝以上の長さがあること(社会情勢により変動あり)
・完全に乾いていること
・引っ張ると切れてしまうほど傷みが激しくないこと

以上の3点がどの団体でも共通している条件です。ヘアカラーはしていても寄付できます。しかし、ブリーチやパーマをかけていたり、白髪まじりの髪だったりすると寄付できない団体もあるので事前に確認しておきましょう。18歳未満の子ども達に贈られるウィッグの材料なので、できるだけナチュラルな髪が求められています。

また、縮毛矯正やパーマをかけていると時間が経ったときに取れてしまい、元のウィッグデザインと変わってしまう恐れがあるそうです。寄付先の団体が受け付けている髪の毛はどんな髪なのか、各団体の公式サイトに載っているので必ず確認をしてください。

2020年6月現在、日本で活動している団体は以下の3つです。

・Japan Hair Donation & Charity
・NPO法人HERO
・つな髪®

それぞれの特徴を詳しく紹介していきます。

Japan Hair Donation & Charity

引用元:Japan Hair Donation & Charity

2009年に日本で初めてヘアドネーション活動を始めたNPO法人です。メディカル・ウィッグ用の髪は31㎝以上でないといけませんが、これより短い髪でも転売用に受け付けています。転売された髪は、シャンプーやカラー剤の開発に使う評価毛やカットマネキンの素材になるそうです。転売で得たお金はウィッグの製作費用として使われます。

激しい傷みがない限りはブリーチをしていても白髪でも、どんな髪色・髪質でも大丈夫です。しかし、JHD&Cの活動を応援したくても事情があって髪を長く伸ばせない方や、髪を切るのが難しい方もたくさんいます。そんな方々でも気軽に参加できる「髪を切らないヘアドネーション」を賛同サロンの協力のもと行っています。

これはヘアドネーションシャンプーを賛同サロンで購入すると、その収益金がJHD&Cの活動資金として全額寄付される仕組みです。その他、コカ・コーラともコラボして寄付活動を行うなど外部との繋がりも強く、個人・企業を問わず多くの支持を得ています。募金による支援も随時受け付け中です。

JHD&Cに髪を寄付する場合、ドナーシートの記入・送付が必要です。賛同サロンの場合はサロン側でドナーシートを用意しているところもありますが、事前にお客様自身での印刷・記入をお願いしておけばサロンでの作業がスムーズになります。

※2020年7月よりサロン経由での寄付・まとめての送付ができなくなります。ドナー様より団体事務局への送付を行うようにしてください

参考:Japan Hair Donation & Charity
参考:Japan Hair Donation & Charity 2020年06月26日【ヘアドネーション受付継続のお知らせ】

NPO法人HERO

引用元:NPO法人HERO

もともとは東日本大震災で被災した子ども達への支援を目的に発足した団体です。オリジナルキャラクター「破牙神ライザー龍」による無償公演を被災地の保育園や幼稚園で行っていました。あるメンバーが癌を発病して入院したことをきっかけに小児がんの子ども達と出会い、2016年にヘアドネーション活動をスタートしました。

ちなみに破牙神ライザー龍のプロジェクトは現在も続いており、被災地の復興支援に加え、小児病棟でのヒーローショーなども行っているそうです。その際に寄せられた募金やオリジナルグッズの売り上げ、またキャラクターの意匠権を販売したお金はHEROの活動を支える大きな柱となっています。

しかし、寄付金の額や送られてくる髪の量は他の団体に比べるとかなり少なく、3団体の中で一番活動規模が小さいです。スタッフの数もごく少数のため、最も外部からの支援を必要としている団体と言えます。

参考:NPO法人HERO

つな髪®

引用元:株式会社グローウィング

先に紹介した2つとは違い、株式会社グローウィングという企業が行っているプロジェクトです。グローウィングは医療用ウィッグを扱う企業で、医療用ウィッグの品質向上や世間の理解を得るために2016年から活動を開始しました。JHD&CHEROとは根本的に異なり、企業のCSR(企業が負う社会的責任)活動の一部として行っている社会貢献なのです。そのため、寄付金は一切受け取っていません。直接送られてきた場合もすべて返送しているそうです。

髪の寄付は31㎝未満でも受け付けています。31㎝以上の髪はフルウィッグに、15㎝以上31㎝未満の髪はインナーウィッグに使われるようです。また、子ども達が使用することからナチュラルな髪を追求しているため、受付可能な髪の基準が最も厳しく取り決められています。ヘアカラーはしていても大丈夫ですが、色味によっては医療用ウィッグではなく美容師や美容学生の練習用ウィッグになるそうです。

15㎝以上31㎝未満の髪の受付は一時期休止していました。また休止になる可能性もあるので、最新の情報についてはつな髪®公式サイトをご確認ください。

参考:つな髪®

ヘアドネーションの流れ

お客様の来店から髪を寄付するまでの大まかな流れを説明していきます。ドライカットが大前提です。雑菌やカビの繁殖を防ぐためにシャンプー等で髪を濡らさずにカットします。

①髪をゴムでしっかりと縛り、何本かに束ねます

寄付する長さを決めたうえで、切り口が揃うように適量を調整して束ねてください。

②ゴムの1㎝~2㎝上のところでカットします

それぞれ束ねた髪の長さがバラバラにならないように注意してください。

③すべての髪を一つにまとめます

カットした複数の束を、ゴムで束ねたまま一つにまとめてください。複数人で寄付する場合は一人ひとりまとめます。向きや長さを揃えてから束ねてください。3団体のいずれかに登録しているヘアドネーション賛同サロン以外はここまでの作業で終わりです。

④梱包して送ります(賛同サロンのみ)

ゴムで一つにまとめた状態で発送用の封筒やレターパック等に入れて発送してください。(元払い)梱包の際、髪の毛をラップやティッシュでくるむなどの包装は必要ありません。そのまま入れてください。

賛同サロンに登録するには

賛同サロンになるには各サイトの応募ページから申し込みます。ただし、各団体によって登録の条件やサポート店としての役割が異なるので、それぞれの内容を確認したうえで検討してください。

Japan Hair Donation & Charityに登録する場合

2020年6月現在、JHD&Cの賛同サロンへ登録するにあたって必要な条件は以下の5つです。

①常にスタッフがいる固定店舗であること(面貸しのシェアサロンの場合は、オーナーなどサロンの正規スタッフからのお申込み以外対応できません)
②公式募金箱の設置と管理をし、年に2回(2月・8月)JHD&Cへ募金額を振り込むこと
③お客様の目につくところに公式ステッカーを貼り付けること
④ドネーションカットを行うこと
⑤『Onewig』のスタイルカットを行うこと(ウィッグカット経験者のみ適用)

ヘアドネーションはボランティア活動ですが、ドネーションカットに関しては無償でなくて大丈夫です。割引をするなどのサービスを行っているサロンもありますが、カット料金やサービスはサロンごとに異なります。サロンの判断で料金設定をしてください。

また、髪の毛の郵送は原則としてドナー本人が行います。しかし、賛同サロンでカットした場合はサロンで髪を預かって郵送するケースがほとんどです。その際の郵送料金はサロンの負担となります。

サロンで郵送する際、ドナーシートと所定の返信用封筒(ドナーが受領証を望む場合のみ)を同封することを忘れないようにしてください。

5つ目のスタイルカットについてですが、これは実際に使用者(子ども達)と相談しながら出来上がった医療用ウィッグをカットしていく作業です。スタイルカットは無償で行うのが原則ですが、使用者の希望で異なる髪型に変えたい時、つまり2回目以降はサロンの判断で料金を設定して構いません。

※前述の通り2020年7月よりサロン経由での寄付・まとめての送付ができなくなります。ドナー様より団体事務局への送付を行うようにしてください。

参考:Japan Hair Donation & Charity公式サイト「賛同サロンって何?」

HEROに登録する場合

HEROはJHD&Cのように登録にあたって満たさなければいけない条件はありません。支援方法もサロンによってまちまちで、非常に柔軟性が高いです。以下にHEROが例示している協力内容を挙げておきます。

・ウィッグ制作用のヘアカットができる(ヘアドネーションカットができる)
・美容室でカットした髪の毛の郵送を行う ※送料は、美容室様のご負担とさせていただきます
・出来上がったウィッグのスタイルカットを無償で行なうことができる。
・ヘアドネーションする方へカット割引などの特典がある
・リーフレットの配布ができる
・募金箱の設置ができる

引用元:NPO法人HEROヘアドネーションプロジェクト「賛同理美容室お申込みフォーム」

上記のすべてを行う必要はありませんが、ドネーションカット髪の毛の郵送はどの賛同サロンでも行っているようです。

また、この他にも何か支援したいことや独自に協力したいことがあればHEROに相談することができます。HEROのホームページに賛同サロンの一覧が協力内容付きで載っているので、HEROへの登録を検討している方は参考にしてみると良いかもしれません。

参考:NPO法人HEROヘアドネーションプロジェクト「賛同理美容室」

つな髪®に登録する場合

つな髪®の場合は賛同サロン=ドネーションカットができるサロンという認識が強いです。したがって、それ以外は特筆すべき賛同サロンならではの役割はありません。とはいえ、ある程度の条件はあるので下記に記載しておきます。

・サロンのホームページを持っていること(サロン検索サイト等での代用可)
・ドネーションカットを行うこと
・つな髪®のイベントに協力すること(ブログ等での告知やサロンにチラシを置くなど)

ドネーションカット自体は美容院側が受け入れさえすればどこの美容院でもできます。しかし、できるかどうか尋ねてお願いするよりは、ドネーションカットができると分かっているサロンへ行ったほうが安心です。そのため、つな髪®のホームページには賛同サロンがリンク付きで掲載されています。

したがって、お客様が来店しやすいようにサロンのホームページを持っていることが条件として挙げられているのです。ただし、これはサロンの所在や営業時間が分かれば良いので、検索サイトの店舗ページやSNSなどのサロンページ、宣伝用のチラシでも代用できます。

ちなみに、ドネーションカット後の郵送はサロンの判断に任されています。ドナー本人に送ってもらうのでも、サービスとしてサロンが代行するのでも構いません。つな髪®では特に定められていないので、どちらが郵送するのかが予約時に分かるようにしておくと良いと思います。

参考:つな髪®公式ホームページ「つな髪®サポート店 応募ページ」

ヘアドネーションで子ども達を笑顔に

ヘアドネーションは社会貢献になり、さらにサロンのアピールポイントにもなります。このコラムを読んで興味を持ってもらえたなら、3団体のいずれか(複数団体への登録も可能)の賛同サロンになることを検討してみてください。また、登録が難しい場合でもお客様から直接ドネーションカットをしたいと相談されることもあるかもしれません。

そのような時はここで紹介したカットの手順に従って切ってもらえれば大丈夫なので、ぜひ断らずに受け入れてもらえたらと思います。医療用ウィッグを待っている子ども達は後を絶ちません。少しでも早く、一人でも多くの子ども達にウィッグを届けるには皆さんの力が必要です。ヘアドネーションはまだ始まったばかりの新しいボランティア活動なので、美容室だからこそできる社会貢献が今後さらに広まっていけばと思います。

※現在、新型コロナウイルスの影響で、髪の毛のトリートメント処理やウィッグの製作を委託している海外工場がストップしていたり、業務を自粛したりしています。それに伴い、賛同サロンの新規申し込みや髪の寄付の受付を一時的に停止・長さなどの制限を行っている場合があります。最新の情報については各団体の公式サイトをご参照ください。