皆さんのサロンではアレルギー対策をしていますか?もしかしたら思いもよらないアレルギーをお客様が持っているかもしれません。アレルギー症状を引き起こしてしまうとお客様の命に危機を及ぼし、また、信頼を損なってしまうでしょう。そのようないつ起きてもおかしくないアレルギーに関するトラブルを予防するためにできることやアレルギー反応が起きてしまったらすべきことをまとめました。お客様が安心して通える安全なサロンをつくり、競合サロンとの差別化を図りましょう。新たな顧客層の開拓ができるので集客にもなります!

アレルギーとは

私たちの体には、体内に異物が入ってくると有害だと判断して攻撃し、排除する仕組みが備わっています。これがいわゆる免疫です。アレルギーとはこの免疫反応の一種で、花粉や食べ物などの異物に対して過剰に反応してしまい、自分の体を傷つけてしまうことを指します。

免疫には生まれながらにして持っている自然免疫と、何らかの刺激を受けて新たにできる獲得免疫の2種類があります。アレルギー反応を起こすのは獲得免疫のほうです。したがって、アレルギーは環境によって発症の有無に差が出ます。何に対して体の防御反応が起こるのかを知って環境を整えれば、アレルギーを予防したり、症状を軽くしたりすることも可能なのです。

参考:一般社団法人日本アレルギー学会「アレルギーを知ろう」

サロンでできるアレルギー対策

それぞれのジャンルのサロンで共通してできるアレルギー対策を2つご紹介します。

まずやるべきなのは、カルテの記入項目にアレルギー欄を設けることです。カルテ、問診票、カウンセリングシートなどサロンによって呼び方はさまざまですが、お客様が来店した時一番に記入してもらうものがありますよね。それにアレルギー欄がない場合は、事故防止のためにぜひアレルギーについての記述欄を作ってください。

しかし、お客様の多くはサロンで使用されているものに詳しくありません。思わぬところで自分のアレルギー物質が使用されているかもしれないので「金属アレルギー・ゴムアレルギー・アトピー・その他(記述)」といった具合に、サロンで起こり得るアレルギーを明記してチェックしてもらうようにしましょう。

次に、サロン内で飲食物をサービスしているサロンができるアレルギー対策です。アレルゲンが入っていないものだけを用意するというのも一つの手ですね。今提供しているものにアレルゲンが含まれるのであれば、グルテンフリーのお菓子やミルクやカフェインの含まれていないドリンクを追加で用意して、念のため食器を通常のものと分けると良いでしょう。

美容院で起こり得るアレルギーと対策

美容院で主にアレルギーを起こす可能性があるのはカラー剤、パーマ液、ゴム手袋、金属の4つです。それぞれのアレルギー物質(アレルゲン)と、その対策について見ていきましょう。

カラー剤

頭皮、髪の生え際、まぶた、額、耳の後ろ、首すじなど、ヘアカラーの薬液が直接付着したところや、洗髪時のすすぎ液が付いたところに、かゆみや赤み、腫れ、吹き出物などの皮膚異常が出ることがあります。これらの症状は「刺激性接触皮膚炎」「アレルギー性皮膚炎」のどちらかに分類されます。

刺激性接触皮膚炎の場合はアレルギー体質でなくても起こるものです。皮膚を守る角質バリアに何らかの障害が起きて刺激物質が入り込むことで起こります。

したがって、同じ人でも皮膚の状態によって症状が出たりでなかったりするのです。ヘアカラーでは主に過酸化水素やアルカリ剤などが原因となり、この刺激物質が取り除かれれば症状は比較的軽く済み、早く回復できます。

アレルギー性接触皮膚炎はアレルゲンに反応する抗体を持っている特定の人に発症するものです。一度アレルギーになると、その後もずっとアレルゲンに触れるだけで症状が出てしまいます。ヘアカラーではほとんどの場合、酸化染料がアレルゲンとなります。

一番有名なのはパラフェニレンジアミン、通称ジアミンです。最近ではジアミンが入っていないカラー剤も出回るようになりました。アレルギーを引き起こす可能性が高い染料を避けて選ぶと良いでしょう。アレルギー性接触皮膚炎の場合は刺激性接触皮膚炎と違ってごく少量のアレルゲンでも反応してしまいます。成分が少ないからと安心してはいけません。

また、お客様の安全を確保するために事前にパッチテストを行うと良いでしょう。ただし、アレルギー症状が現れるまでには時間がかかる場合があります。発症が最も遅い遅延型の場合は、2448時間後に起きるため、実際に施術を行う3日前にパッチテストをするのが理想です。

現実にはなかなか難しいと思いますが、ヘアカラーでかぶれた経験のある方やアレルギー体質の方には、予約時にヒアリングして事前のパッチテストをお願いすると万が一の事態が避けられます。パッチテストで陽性反応が出た方には、安全性を考えてヘアマニキュアをおすすめすると良いでしょう。

参考:藤田医科大学医学部 アレルギー疾患対策医療講座「Q&A‐ヘアカラーアレルギー」
参考:神戸医療生活協同組合 いたやどクリニック「アレルギーについて」

パーマ液

パーマによって痒みや赤み、発疹が出る場合も刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎のどちらかに分かれます。これもパッチテストで判断すると良いです。アレルギー性接触皮膚炎の原因は主にシステアミンという化学成分です。美容師の手荒れの原因にもなるので、パーマの施術をする時には手袋を着用することをおすすめします。

美容師の方に多い手荒れについては、原因別に対策をご紹介しているので、詳しくはこちらのコラム「美容師・エステティシャンに多い手荒れの原因とガサガサひび割れ対策」をご覧ください。

アレルギーを予防するためには、パーマ液の原材料をよく見てなるべく化学成分が少ないものを選ぶと良いでしょう。さらに近年は酵素パーマなどの人に優しいノンケミカルなパーマ液もあるので、一つくらいメニューに取り入れておくとパッチテストで陽性反応が出たお客様にも対応できます。

ただし、天然物であってもアトピーなどの敏感肌の方には刺激が強い場合もあります。お客様の肌の状態を見ながら施術を決めましょう。

それからパーマ液は顔や首などに流れていきやすいので、粘度が高いものを使用し、万が一地肌に付いてしまった場合にはすぐに水で濡らしたタオルでしっかりと拭き取ってください。

参考:株式会社真範研究所「安全なパーマ 毒性(LD₅₀)アレルギー」

ゴム手袋

天然ゴムにはラテックスという成分が含まれており、特定の人にアレルギーを引き起こす可能性があります。アレルギーとは最初に説明した通り免疫反応の一種です。微量でも毎日のように使っていたり、体に蓄積、吸収したりしていると、それによって体の中で抗体が作られてアレルギーを発症することもあります。したがって、お客様よりもむしろ美容師の皆さんに気をつけてほしいのがゴムアレルギーです。

もちろん、既にゴムアレルギーを持っているお客様にとっては危険なので、双方のことを考えると塩化ビニル製の手袋かラテックスを使用していない合成ゴム手袋を使うことをおすすめします。

金属

美容院で意外と見落としがちなのが金属アレルギーです。たとえば、ヘアセットの時に使うヘアピンは金属製ですよね。これが頭皮に触れることで腫れやかぶれなどのアレルギー症状が出る恐れがあります。金属アレルギーの方でも使えるようにコーティングしてあるヘアピンをストックしておくと良いでしょう。

また、オシャレな方や既婚者の場合、指輪をして施術をすることが多いですが、カウンセリング時にお客様から金属アレルギーだと申告されたら施術中だけ外してください。万が一に備えて細かなところまで気を配るのも大切な心掛けです。

ちなみに美容師の方で金属アレルギーになってしまった場合、商売道具のハサミが持てなくなってしまうのは大変ですよね。そんな方々のために金属アレルギー用のハサミを取り扱う店や、自前のハサミにコーティングを施してくれる店もあるので、もしご自身が金属アレルギーになってしまった時にはこのコラムを思い出してください。

関連:ハサミ屋はやし「金属アレルギーの方向けのハサミの特徴」
関連:シザーズプライム「鋏・シザーズの金属アレルギーでお困りの方へ」

ネイルサロンで起こり得るアレルギーと対策

あまりポピュラーではありませんが、実はジェルネイルアレルギーというのも存在します。痒みや赤み、指周辺の皮むけ、水疱などが特徴です。とはいえ、これはジェルネイルをすることで起こるアレルギーの総称なので、実際の原因はジェルネイルに含まれる成分やUVライトなどです。

ちなみに、巷ではジェルオフ剤や未硬化ジェルを拭き取る時に使うクリーナーに入っているアセトンが有害だという意見もありますが、アセトンのアレルギー性は確認されておらず、アルコール類の揮発性の高さから皮脂が奪われ乾燥し、手荒れが起こると考えられています。

参考:職場の安全サイト「製品安全データシート アセトン」

ジェルに含まれる成分

ジェルネイルに含まれているものでアレルギー作用があるのはHEMAという成分です。遅延型アレルギー(症状が発症するまでに時間差が生じる)を引き起こす恐れがあるので、事前にパッチテストをすることが大切です。ただし、一度パッチテストをして問題なかったからと言ってずっとアレルギーが出ないとは限りません。

すべてのアレルゲンに共通して言えますが、使い続けるうちにアレルギーになることもあります。さらに、指だけではなく顔や首にもアレルギー性皮膚炎の症状が現れることもあるので注意が必要です。

参考:化粧品成分オンライン「HEMAとは…成分効果と毒性を解説」

UVライト

ジェルを硬化させる時に使うUVライトに含まれる紫外線が原因でアレルギーを引き起こすこともあります。一般的には日光アレルギーと呼ばれている光線過敏症は、日光にさらされた部分に痒みや発疹などの炎症が起こるものです。

したがって、より安全性の高いLEDライトの導入をおすすめします。UVLEDが組み合わさったものもありますが、そちらにも少量の紫外線が含まれているため、LEDだけのライトを使うほうが無難でしょう。

参考:MSDマニュアル家庭版「光線過敏反応」

金属

ネイルに使うラメやネイルパーツの一部に金属が含まれている場合、金属アレルギーの方には注意が必要です。ラメであればジェルにほとんどコーティングされるので問題ありませんが、スタッズやチェーンなどのネイルパーツは金属がむき出しになった状態なので、ふとした拍子に皮膚に触れて金属アレルギー反応が出てしまう恐れがあります。お客様と十分に話し合ったうえでアートの内容を決めてください。

また、金属を含むネイルアートをしていると病院のMRICT検査が受けられないことがあるので、アレルギーとは関係ありませんが病院に行く予定があるお客様にはあらかじめ説明しておくと親切ですね。

マツエクサロンで起こり得るアレルギーと対策

厳密に言えばアレルギーではないのですが、アレルギーとよく似た症状を起こすものに「化学物質過敏症」という病気があります。これは免疫反応の異常ではなく、自律神経の異常で起こるものです。マツエクサロンではグルーが硬化する際に発生するホルムアルデヒドが問題になります。

有名なのは「シックハウス症候群」です。シックハウス症候群の原因もこのホルムアルデヒドであり、化学物質過敏症の一つに数えられます。この病気はひとたび発症してしまうと別の化学物質でも症状が出てしまうことがあるので、化学物質全般に対して慎重になる必要があります。すでに全国で約100万人の患者がいるそうなので、既往歴は必ずカウンセリング時に聞いておきましょう。

また、多くのサロンで採用しているエチルグルーはアセトアルデヒドの放出量が多いです。可能であれば放出量がより少なく、医療グレードとも呼ばれるブチルグルーを使用しましょう。

それからグルーにはその他にもさまざまな複合物が含まれており、中にはゴムアレルギーを引き起こすラテックスが使用されていることもあります。グルーの成分は安全データシート(SDS)で確認できるので、メーカーに問い合わせて把握しておくと安心して使えます。

参考:TBSラジオ「「化学物質過敏症」を知っていますか?」(2017/3/13)
参考:BEAUTY PRODUCTS「グルーの必須知識」

エステ・リラクゼーションサロン

エステサロンやリラクゼーションサロンも、メニューによっては気をつけなければならないものがあります。もっとも、アレルギーだけではなく、先述したように刺激性接触皮膚炎になる可能性もあるので、万が一発症してしまった場合には慎重な見極めが必要です。今回はアロマオイルとキャビテーションの2つの観点からお伝えします。

アロマオイル

アロマオイルというとなんだか体に良さそうだと思い込んでいる人もいますが、実際は天然物質だけでなく化学物質が含まれているものも数多くあります。したがって、化学物質過敏症にも気をつけなければなりません。では100%天然物質のオーガニックなオイルなら大丈夫かというとそうではありません。敏感肌の人やアトピー体質の人は天然物質(カモミール、レモングラスなど)でもアレルギーを起こす可能性があります。

その他の人も何か特定のアレルギーを持っているのであれば発症リスクは高くなるので、そういったお客様に対しては、初めて使用するアロマオイルの場合、パッチテストをしておくと安心です。以下にパッチテストの方法をご紹介します。

使用したい植物油や植物油で薄めた精油(ブレンドしたマッサージオイルなど)をコットンやガーゼに少量含ませ、腕の内側の肌の柔らかい部分に貼り付ける、または包帯などで密着させます。そのまま時間の経過ごと肌のようすを確認し、赤みや発疹が出ていないかなどを観察します。24時間続けてトラブルが起こらないようでしたら、それを使用しても大丈夫ということです。(書籍によってテストの時間が違いますが、慎重を要する人は時間を長くして下さい) 但し、大丈夫と判断したものでも体調によってトラブルが起こる場合があります。特に女性の場合、生理前や生理中などは肌が敏感になりますので注意して下さい。

引用:AROMA THERAPY「6.アロマテラピーの注意点!(使用編)」

キャビテーション

キャビテーションの使用時に注意しなければならないのは金属アレルギーです。肌に触れるプローブ部分に金属を使っているものが多いため、もともと金属アレルギーの方はもちろん施術できませんし、普段から金属のアクセサリーを身に着ける習慣がある方の施術には細心の注意が必要です。

金属アレルギーも積み重ねによってある日突然発症してしまいます。したがって、金属類を身に着けることが多い人や年齢が高い人ほど金属アレルギーになるリスクは高いです。しかし、サロンのターゲット層の多くはこれに当てはまる女性でしょう。ですから、金属製ではなくシリコン製のキャビテーションを導入するなどの工夫が大切になります。

正しい知識を持って予防し、冷静に対処を

サロンで起こる可能性のあるアレルギーとその対策についてご紹介してきました。「こういうこともあるかもしれない」と事前に把握しておくことで、これからのサロン運営でも気を回しやすくなりますし、万が一アレルギー患者が出ても対処しやすいです。

アレルギー対策をしていることはサロンの大きなアピールポイントにもなりますし、潜在顧客層へのアプローチにもなります。自分たちでできることをして、サロンやスタッフ、そして大切なお客様を守りましょう。

ちなみに、もしもお客様にアレルギーが出てしまった場合の補償が受けられる「美容所賠償責任保証制度」というものがあります。これはアレルギーに限らず、盗難やケガなどにも対応した制度です。まだ加入していないサロンは、万が一の場合に備えて検討してみるのも良いかもしれません。

参考:全日本美容業生活衛生同業組合連合会「美容所賠償責任補償制度」

※アレルギー症状が出た場合、アナフィラキシーショックなどが起こり命に関わる恐れがあります。一度症状が軽快しても数時間後に悪化することもあるため必ず病院を受診するように案内しましょう。