美容サロンは簡単にドタキャンされたり、軽い気持ちで無断キャンセルされたりすることがとても多いです。今までの知識コラムでもノーショウなどの対策方法をたびたび取り上げてきましたが、今回は法的にキャンセル料をいくらまで請求できるのか解説します。また、お客様にキャンセル料を請求しても無効になるケースも多々あるので、無効化されないための措置についてもまとめました。キャンセル料見直しのためにも参考にしてください。

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キャンセル料とは

予約していたのに利用をキャンセルする場合に発生する料金がキャンセル料です。サロンに対する損害額の補填や迷惑料という認識で問題ありません。ですが実際は、サロンでキャンセル料を設定しているところは非常に少ないです。

予約期間を限定したり、回数券を一回分消費したりといったペナルティを設けているところもあるにはありますが、現状ではほとんどのサロンがキャンセルされてもそのまま涙を呑んでいます。

しかし、それでは今後も簡単にキャンセルされてしまいますし、お店の損害も増えるばかりです・・・そこで!抑止力や被害を最小限に食い止める手段として、キャンセル料を設定することをおすすめします!

キャンセル料以外についてのキャンセル対策については、以前公開したコラム無断キャンセル対策方法 ドタキャンを防ぎサロン経営を維持する方法でまとめているので参考にしてみてください。

キャンセル料が無効になるケースがある

しかし、キャンセル料の設定の仕方や請求したケースによっては、法律で無効化されてしまうことがあるので注意しましょう。サロンのキャンセル料に当てはまる無効化ケースは、以下の消費者契約法第9条の第1号に合致する場合です。

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

引用元:電子政府の総合窓口e-Gov 「消費者契約法」

要約すると、消費者保護のため、高額のキャンセル料の請求は禁止されています。よって、平均的な損害額を超える金額にはしないようにしましょう。また、この「平均的な損害額」というのは各サロンによって、そして予約メニューによっても違うものです。普段の来客状況などを踏まえたうえで、明確な根拠を持って「平均的な損害額」を決定してください。最初だけ多少の手間がかかりますが、それが後々のトラブルを防ぐのにも役立ちます。

また、キャンセルポリシー(キャンセルに関する規定)を定めていない、または開示していない場合にもキャンセル料の請求は難しくなります。なぜなら、キャンセル料の支払い義務が明らかでないため、サロン側が損害を立証しないと請求できなくなるからです。

飲食店などと違ってキャンセルによる物的損害がなく、明確な証拠の提出が厳しいサロンにとっては不利な状況になってしまいます。よって、どのような条件の時にキャンセルとみなし、キャンセル料が発生するのかを定めたキャンセルポリシーを作り、ホームページ等に記載しておくことをオススメします。

キャンセル料の決め方 ヘア・ネイル・マツエク・リラク編

サロンのキャンセル料は段階ごとに設定されているものがほとんどで、当日キャンセルの場合は予約していた施術料金の50%、前日キャンセルの場合は予約していた施術料金の30%が相場といわれています。回数券やコース制の場合は当日キャンセルで一回分消化、回数無制限の契約者の場合は1,000円~3,000円に設定しているところが多いようです。

とはいえ、先に述べた通り平均的な損害額は各サロンによって違います。そこで、適切なキャンセル料はいくらなのかを決めるための計算式をご紹介します!

「予約がキャンセルされなければ得られた粗利益額」×「予約されていた日に他のお客様が来ない確率」「キャンセルによってサロンに生じる平均的な損害の額」

この計算式のポイントは粗利益で考えるということです。粗利益とは売上金額から売上原価を引いたものです。売上総利益とも言います。サロンの場合は売上原価に人件費は含みません。よって、カットや手のみによるマッサージならほとんど売上金額に近い額になります。

お客様が来ない確率については、普段、当日予約や飛びこみのお客様がどれくらい来るか、前日に予約するお客様は全体のどれくらいいるかをもとに、大体の確率を出しましょう。

参考:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 企業法務の法律相談サービス「高額キャンセル料によるトラブル注意!消費者契約法で無効にならないキャンセル料条項の作り方」

キャンセル料の決め方 エステサロン編

エステサロンの場合は消費者契約法とは別に、特定商取引法の対象にもなっているのでキャンセル料の設定には注意が必要です。一か月以上の継続が必要なものかつ、総額5万円を超える施術に限り、この法で規制されます。キャンセル料の上限は以下の通りです。

①クーリングオフ期間終了後、初回の施術前に中途解約した場合:2万円
②初回の施術以降に中途解約した場合:2万円または契約残額の10%相当額のどちらか低い方

②にある「契約残額」とは契約コースの総額から、既に施術した分の相応額を引いた金額のことです。これらのルールを守って約款や利用規約を作りましょう。また、中途解約以外のキャンセルや条件に当てはまらない施術等への対応としては他のものと同じく前述した通りの決め方で大丈夫です。

参考:特定商取引法ガイド

損害賠償の請求について

ここまでキャンセル料について述べてきましたが、キャンセルが発生した時期や予約内容によっては平均的な損害額を超えた被害が出てしまうこともあるでしょう。このような場合、キャンセル料だけでは到底被害を抑えきれません。よって、キャンセル料を超える損害が発生した場合、キャンセル料とは別に損害賠償の請求をするということを予め明記しておき、同意してもらってから契約すると良いですね。

今はポータルサイトからの予約が増えてきていますが、電話での予約も少なくないので、同意してもらうのは難しいと思われるかもしれません。ですが、キャンセルポリシーについてホームページやブログ等に記載し、「予約前に必ずご一読ください」と注釈を入れておくだけでも違います。

電話の場合は口頭でかいつまんで説明し、了承を得ましょう。録音機能をつけておくことで後に言った・言っていないのトラブルを予防できます。電話確認も12分程度で終わる簡単な確認なので、必ず怠らないようにしてください。

キャンセル料の支払い義務と上限

きちんとキャンセルポリシーを定め、妥当な額を請求したとしても、料金を支払わないで無視する人は一定数いるでしょう。そのような場合は諦めて泣き寝入りをするのではなく、継続して支払いを要求するべきです。でないと、サロンはますますキャンセルされやすくなり、契約が軽いものになってしまうからです。

キャンセルポリシーを明示したうえで予約されたならば、お客様側にはキャンセル料の支払い義務が生じます。そして支払わなかった場合は延滞料を要求することも可能です。ただし、以下の消費者契約法第9条の第2号に定める上限を超えた額は請求できず、超過分は取り消しとなるので注意しましょう。

(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

引用元:電子政府の総合窓口e-Gov 「消費者契約法」

つまり、サロンが定めた期日までにキャンセル料や損害賠償を支払わなかった場合は、期日を過ぎた分を上乗せして請求できるのです。ただし、この延滞料は年14.6%までと定められており、これを日割りで計算すると0.04%になります。たとえば、3,000円のキャンセル料を10日遅れて支払う場合は、以下の計算で出た所定金額までしか上乗せして請求してはいけません。

3,000円×0.04%×10日間=1,200円

よって、この場合お客様が支払う最大額はキャンセル料3,000円と延滞料1,200円を足した4,200円だということです。この金額を1円でも超えると、その超過分は消費者契約法によって無効化されます。また、延滞料を設定するのであれば、その旨も必ずキャンセルポリシーに記載しておきましょう。

キャンセルポリシーのサンプル例

ここまでの総まとめとして、キャンセルポリシーとして各サロンで使えるテンプレートを載せておきます。日数や金額などを自分のサロンに合わせて変えたうえで、ポータルサイトの予約ページやホームページに記載するなど、ご自由に使ってください!

キャンセルについてのご案内

 このたびは当サロンをお選びいただきありがとうございます。スタッフ一同、一人でも多くのお客様に綺麗になっていただきたいと、心を込めて施術しております。

 施術メニューや状況に合わせて予約時間の設定をしているのですが、少人数で営業しているのもあり、大幅な遅刻や急なキャンセルが出てしまうと皆さまに大変なご迷惑をおかけしかねません。サロンで過ごす時間を心地よいものとするために、皆さまにもご理解・ご協力いただければ幸いです。

 つきましては、キャンセルをする場合、また、遅刻が判明した際もすぐにご連絡ください。可能な限り対応させていただきます。予約をキャンセルする際は2日前の営業時間(○時)までにご連絡ください。

 それを過ぎてからキャンセルされた場合、下記の通りキャンセル料を頂戴いたします。

前日キャンセル:予約メニューの30%

当日キャンセル:予約メニューの50%

無断キャンセル:予約メニューの100%

※ご連絡なしで15分以上遅刻した場合は当日キャンセルとさせていただく可能性があります

・ただし、荒天や震災等によりご来店できない場合や、やむを得ない事情によるキャンセルの場合は上記規定の限りではございません。詳しくはスタッフまで直接お問い合わせください。

・キャンセル料を申し受ける際は請求書を発行いたしますので、キャンセル日から14日以内にお支払いをお願いいたします。なお、キャンセル料のご入金が期日までに確認できない場合、一日につき0.04%をキャンセル料に乗じた延滞金も合わせて請求させていただくことがございますのでご了承ください。

 どなた様にも丁寧な施術と快適な空間を提供できるよう今後も精進して参ります。末永くご愛顧いただければ嬉しい限りです。皆さまのご来店、心よりお待ちしております。

○年○月○年 ○○サロン

最初と最後にサロンからのメッセージを入れると、キャンセルポリシーに対するマイナスの印象が和らぎ、お客様にも気持ちよく納得してもらえます。これはサンプルなのでそのまま使っていただいても大丈夫ですが、例文を参考にしてサロンに合ったもっと良い言い回しやサロンからの生の声を入れても良いですね。

被害に収集がつかない場合は専門家に相談を

あまりにもドタキャンや無断キャンセルが重なり、既に被害が大きくなってしまっている場合は早急に対応が必要です。恐らく一部の利用者から「キャンセルしても大丈夫な店」というレッテルを貼られているのでしょう。その状態だとサロンだけでキャンセル料を請求するのは難しく、どんどん損害が増していってしまいます。

そのような場合はできるだけ早くに弁護士へご相談ください。弁護士から内容証明や督促状を送ってもらうことで事態が収束する可能性があるからです。無断キャンセルには時効もありますので、早め早めの処置をオススメします。

サロンでキャンセル料を設定する意味

今回はキャンセル料を設定する前提で、法律的にどこまで請求できるのか、注意すべきことは何か、といったことをまとめました。しかし、気軽に行けるのがサロンの魅力だと考える方も少なくないと思います。そういったサロンでは、キャンセル料に対して否定的な意見を持っているかもしれません。

ですが、キャンセルポリシーを掲げることで遅刻や無断キャンセルに対する抑止力になりますし、他のお客様やスタッフの全員が気持ちよく過ごせる空間を守れます。一部の方の心ない行動で誰かが迷惑を被ったり、不快な気持ちになったりしないよう、この機会にぜひキャンセル料の導入を考えてみてください。