美容院で働いていると、まれに来店される抜毛症・円形脱毛症のお客様。実はそんなに珍しい病気ではなく、相当な数の患者がいるといわれています(詳しくは後述)。頭髪の脱毛はデリケートな問題です。実際にこのような問題を抱えたお客様を担当した際に、対応に困ったという方もいるのではないでしょうか。今回は、コロナ自粛の影響で増加傾向にある抜毛症のお子様や円形脱毛症のお客様への対応方法、脱毛斑に悩む方を受け入れる方法をご紹介します。

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コロナ自粛やストレス社会で増えている?女性や子どもに多い抜毛症

抜毛症とは読んで字のごとく、自分で髪の毛を抜いてしまう病気です。何度も何度も抜毛を繰り返すうちに脱毛が生じてしまいます。一般的には髪や眉毛、まつ毛を抜くことが多いですが、抜毛癖のある人にとってはあらゆる部位の体毛が抜く対象になり得るそうです。患者には意識的に抜いている人、無意識のうちに抜いてしまう人の両パターンがいます。

抜毛症が引き起こされる原因は、強い緊張感や不安などによるストレス。100人に1人~2人の割合で見られ、子どものうちに発症することが多いです。成人の患者では約9割が女性だといいます。

特に最近では新型コロナウイルスの影響で、様々な活動を自粛せざるを得ない状況下にあり、自由に外に行けない・遊び方に制限がかかるといったストレスが影響し、小学生女児を中心に発症者数が増加傾向にあります。現在自粛や様々な制限が解除されつつある中でも抜毛症についての悩みは尽きず、「学校に行くのが恥ずかしい」、「美容室に行って症状を伝えることも恥ずかしく、感染リスクも不安で行きづらい」といった児童が多い現状です。

自ら毛髪を抜いてしまう人に対して、サロン側から対策できることは少ないです。抜毛症は精神疾患の一つに分類されています。もし抜毛症のお客様に相談された場合は心療内科や精神科の受診もおすすめしましょう。

参考:MSDマニュアル家庭版「抜毛症(抜毛癖)」

円形脱毛症とは

円形脱毛症とは、その名の通り突然部分的に毛が抜けてしまう病気です。脱毛部分の多くは円形や楕円形をしており、よく見ないと分からないほど小さなものから10円玉大のもの、頭部全体に広がるものなど大きさはさまざま。一度に複数できてそれぞれが拡大し、繋がる場合もあります。また、一般的に円形脱毛症といえば髪が抜けることを想像する方が多いと思いますが、眉毛やその他の体毛で発症するケースも。全国に25万人以上もの患者がいるといわれています。

小さなものであれば基本的には放置しておいてもしばらくすると自然に発毛して治りますが、再発率がとても高く、最初の発症から5年以内に7割が再発するといわれています。

参考:M-Review「特集 円形脱毛症フロンティア」
参考:AERAdot.「“10円ハゲ”の原因は精神的ストレスではない? 円形脱毛症のメカニズム」
参考:円形脱毛症.com「円形脱毛症の症状と特徴」

円形脱毛症の原因

円形脱毛症が起こるメカニズムは、まだ正確には明らかになっていません。しかし近年は徐々に解明が進んでおり、自己免疫疾患が原因ではないかとされています。体内で免疫異常が発生し、毛根組織に免疫細胞が自ら攻撃してしまうというのです。なぜ免疫に異常が起こるのかまでは分かっていませんが、他の自己免疫疾患や感染症が原因で併発することもあるのだとか。

また、よく円形脱毛症の原因として挙げられているのがストレスです。実際、ストレスを受けると自己免疫疾患や内分泌異常などが引き起こされることもあります。ただし、免疫機能が正常であってもストレスにより円形脱毛症になる場合もあるのです。

ストレスを受けると交感神経が優位になりますが、強すぎるストレスを受けたり、ストレス状態が長く続いたりすると交感神経に異常が現れて血管が収縮し、血流が悪くなります。そうすると毛根まで栄養が十分に行き渡らず、結果として抜け毛が起きてしまうのです。

その他の原因として遺伝アトピー出産による女性ホルモンの急激な減少が考えられます。特に、近親者に円形脱毛症になったことがある人がいる、アトピーに罹ったことのある、または家族にアトピーの方がいる場合は、他の人に比べて円形脱毛症になりやすいので注意が必要です。

参考:円形脱毛症.com「円形脱毛症の発症の原因」

円形脱毛症とは違う?AGAとは

脱毛部位が頭部全体に広がる全頭型の円形脱毛症や、加齢による抜け毛と似た病気にAGA(エージーエー)があります。男性型脱毛症ともいわれ、思春期以降に生え際や頭頂部から徐々に抜け毛が進行する病気です。AGA患者は円形脱毛症よりも多く、全国に1,260万人もいます。成人男性のおよそ3人に1人がAGAによる薄毛に悩んでいるのです。成人男性であれば20代でも発症する可能性はあります。

AGAは進行性の疾患なので、放っておくとどんどん禿げてしまいます。円形脱毛症の場合はほとんど前兆がなく、気づいたときには脱毛斑(脱毛箇所)がある場合がほとんどですが、AGAはだんだんと薄くなっていくので初期症状が分かりやすいです。最近抜け毛が多いなという男性は、円形脱毛症の前触れなどではなく、AGAの可能性があります。早めに皮膚科や専門の医療機関を受診するのがおすすめです。

参考:AGA-news「AGAとは」

抜毛症・円形脱毛症のお客様が来店しやすいサロンづくり

脱毛斑を見られるのが恥ずかしくてサロンに行けない、と悩むお客様は非常に多いです。しかし、それでは髪を伸ばしっぱなしにすることになるので、毛先が不揃いになったり、髪がどんどん傷んだりと良いことはありません。頭皮や髪の毛のケアのためにも美容院へ行った方が良いのですが、脱毛斑を気にするあまり、なかなか踏ん切りがつかないという方も大勢います。そのようなお客様でも気兼ねなく来店できるサロンづくりについてお伝えしていきます。

プライベート空間を作る

脱毛症状はデリケートかつ極めて個人的な問題なので、サロン内の人数が少なければ少ないほど、お客様にとっては安心できる空間になります。したがって個室があるサロンやプライベートサロンだと、円形脱毛症に悩むお客様も行きやすいです。個室がない場合は奥の席にお通ししたり、他のお客様との接触が少ない時間に対応したりと、なるべく周りに見られないようにするなどの配慮ができると良いですね。

また、施術は一人がずっと担当するマンツーマン制が理想です。「恥ずかしい」と思っている症状を複数の他人である美容師に見られることは、お客様にとってはとてもつらいことだからです。これらの要素は他のお客様に対しても大きなアピールポイントとなるので、ホームページやSNS、ポータルサイトなどで「プライバシー厳守!」や「言いづらい頭皮や髪のお悩みを一緒に解決します。」などの寄り添う姿勢を示した言葉を用いて積極的に発信していきましょう。

薄毛予防を宣伝

円形脱毛症の方が最も気にするのが「さらに脱毛部分が広がるのではないか」、「いつまで抜けるのか」、そして「髪を生やすにはどうしたら良いか」ということです。抜け毛と発毛・育毛について悩んでいるお客様が多いので、これらの対策が美容室でもできることを宣伝しましょう。具体的にはヘッドスパの看板メニュー化、髪や頭皮のケアに効果のある薬剤の使用や店販の充実です。

血行を良くすることや清潔な頭皮環境を維持することは、健康な髪の毛の成長には欠かせません。そのためにできる美容室ならではの方法を伝えると効果的です。

ただし、単に薄毛対策を謳っただけではエイジングケアとしかみなされないかもしれません。円形脱毛症のお客様にも対応していることをきちんと明示しましょう。

参考:円形脱毛症.com「ヘアケアの基本」
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関連:店販の売上を伸ばす技とは?サロン経営に法律を活かす【薬機法その①】

抜毛症・円形脱毛症のお客様が来店されたら

ここからは抜毛症や円形脱毛症のお客様がサロンに来店した場合の対応方法についてご紹介していきます。自覚していないお客様への伝え方や、お客様側から申告があった場合の返し方、アドバイスの仕方などをまとめました。繊細な話題だからこそ慎重に対応したいですよね。事前にある程度の対応方法が分かっていれば、実際の場面でも落ち着いて対処できます。ぜひ参考にしてみてください。

脱毛斑を見つけたら

後頭部などの自分では分かりづらい位置に脱毛斑があったり、周りの髪で隠れるくらい小さかったりすると、自分では気づいていないことも少なくありません。お客様から言い出されなかった場合は必ずこちらから話題に出しましょう。

とはいえ、いきなり「お客様、ここに10円ハゲができていますよ」というのはあまりにもデリカシーが無さすぎますよね。どのように切り出したらお客様を傷つけずに教えることができるのでしょうか。

いきなり核心に触れるのではなく、まずは本題に繋がる話題を振りましょう。たとえば「最近、環境が変わりましたか?」、「何か悩み事でもありますか?」などです。新規のお客様やそこまで親しくない方の場合は「少しお疲れのように見えますが大丈夫ですか?」とさりげなく聞くのも良いですね。「実は……」と話してくれるようなら「やっぱり大変なんですね……頭皮や髪にも少し疲れが出ていますよ」という具合に話を繫げて本題に入りましょう。

心当たりがないようであれば「もしかしたらご自身でも気づかないうちに疲れやストレスを溜め込んでしまっているのかもしれないですね。体からSOSのサインが出ていますよ。」と言って話題に出すとスムーズに切り出せます。

タイミングについてですが、気づいた時点ですぐに伝えましょう。できればカウンセリング中には伝えておいたほうが良いです。お客様が自分の状態をきちんと把握していないと、正しくヘアスタイルを決めることができません。脱毛斑の位置や大きさ、進行状況を伝えた後に脱毛斑を上手く隠せるヘアスタイルを提案し、お客様と相談しながらどのようにカットしていくかを決めてください。

事前に抜毛症・円形脱毛症であることを相談されたら

施術前にお客様から自己申告された場合は、どう反応を返せば良いのでしょうか。まずは「相談してくださってありがとうございます。」と、勇気を持って打ち明けてくれたことに感謝の言葉を述べましょう。この一言があるだけでもお客様の緊張はほぐれ、安心してもらえます。

あまり気持ちの良い話ではありませんが、円形脱毛症の方に対して偏見を持つ人々が一定数いるのは事実です。馬鹿にする人、深刻な悩みを軽んじる人、心の弱さが原因だと決めつける人などがいます。髪に関するプロで、さまざまなお客様に相対する美容師の方なら大丈夫だと思いますが、少なくとも自分はそういう人間ではない、真剣に向き合うという姿勢を示してあげてください。

また、相談を受けた場合には必ず症状の具合を確認しましょう。よくある円形のものならだいたいはカットやスタイリング次第で隠せると思いますが、場合によってはウィッグ等を勧める必要があったり、そもそもウィッグカットの注文だったりする可能性もあります。美容室でできること・できないことをきちんと明確にして伝えましょう。

ヒアリングを通して施術するのに問題が無いようであれば、その後は通常通りお客様のご要望に沿ってヘアスタイルを決めていってください。

不安を煽らない

一度円形脱毛症になったことがある方は分かると思いますが、髪がなくなるというのは非常にショックが大きいです。会話の中で不必要に不安を抱かせることの無いよう気をつけましょう。円形や楕円形のものなら基本的に半年ほどあれば自然治癒すると言われています。治らないのではと心配するお客様には、そのことを伝えてあげると良いですね。

ただし、どんどん広がってきたり、形が歪だったりと特殊な状態の場合は、皮膚科やかかりつけの病院へ行って治療を受けるように勧めてください。

主な原因がストレスとされる抜毛症のお客様には、悩みなどを聞いてあげるだけでもストレスが緩和されます。聞き手に回ることに専念して、美容室はリフレッシュできる空間であることを知っていただけると良いでしょう。

サロンの売り上げに繋がるアドバイス

抜毛症・円形脱毛症のお客様に対しては、脱毛斑を隠せる自宅でのスタイリング方法を教えるととても喜ばれます。直接の売り上げには繋がりませんが、信頼を得ることができるので、再来店の確率アップや口コミの高評価などが期待できるでしょう。

また、頭皮と髪の健康に役立つホームケア方法なども教えてあげると良いですね。たとえば正しい髪の洗い方や、シャンプーなどヘアケア商品の選び方、生活習慣についてなどです。店販にちょうど良いものがあればおすすめして紹介しておくと客単価アップにも繋がるかもしれません。

他にも、時間に余裕があればヘッドスパを提案してみるのも良いでしょう。どういうメカニズムで髪が育ち、ヘッドスパは育毛にどのような効果があるのかを丁寧に説明すれば、多くの方は興味を持ってくれるはずです。その日にいきなりは難しくても後日、改めて予約をしてくれるかもしれません。

脱毛症のお客様を対応できない場合におすすめの活動 ヘアドネーション

症状がかなり進行している方や、抗がん剤治療などで多くの毛が抜けてしまった方に対して直接アプローチすることは難しく、美容室でできることは限られています。施術やスタイリングはできませんが、美容室ならではの活動としてヘアドネーションの支援をするのは一つの手です。ヘアドネーション団体の賛同サロンとして、ドネーションカットや寄付・宣伝を援助してみてはいかがでしょうか?

ヘアドネーションに興味のある方はこちらの「ヘアドネーションサロンになるには サポート店登録から施術までの流れ」をご覧ください。

美容室だからこそできる誠実な対応を

ここまでいろいろと書いてきましたが、どんなお客様にも当てはまる「正解」というのは、正直なところないでしょう。お客様の性格や信頼関係によって、対応の仕方はいくらでも変わるからです。したがって、その判断は現場で働く皆さん自身がしなければなりません。

抜毛症や円形脱毛症というデリケートな問題を抱えたお客様に対しては非常に接客が難しいところですが、このコラムではその判断材料の一つとして病気の知識やお客様への対応例をご紹介しました。美容師の皆さんにとっても、お客様にとっても、サロンにいる全員が気持ちよく過ごせるよう、コラムの内容を普段のサロンワークに役立ててもらえたら幸いです。

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