美容院やエステサロンなどを営む多くの経営者は個人事業主です。起業するにあたって事業専用の口座が必要になります。しかし全国にはさまざまな金融機関があり、それぞれ異なった特徴を持っています。初めて口座を作った時に、どの金融機関にするか悩んだ方も多いのではないでしょうか。金融機関はお金を管理するうえでとても重要な場所です。場合によってはコスト削減も可能になります。各特色を掴んで最適な機関を見つけましょう!

金融機関の種類

日本国内の金融機関はメガバンク(都市銀行)、地方銀行、ネット銀行、信託銀行、信用金庫、信用組合に分類されます。規模や場所が異なるだけで機能面では同じだと思う方は多いでしょう。確かにどこも銀行業務を行っているので、一見大した違いはないように思えるかもしれません

しかし、詳しく見ていくとそれぞれ機能や目的が大きく異なるのです。事業用の口座が必要なのは資金の預け入れ、資金調達、外部との取引やスタッフの給料の振り込みのためですよね。これらのうち、どれに重きを置くかで選ぶべき金融機関は変わってくるのです。

また、先述したような分類ができない独立した金融機関として日本の中央銀行である日本銀行と、2007年の郵政民営化で民間銀行となったゆうちょ銀行があります。これから、日本銀行を除いた金融機関のそれぞれの概要をご紹介します。

メガバンク(都市銀行)

全国の主要都市に支店を展開している大規模な銀行を指します。預金量や貸出量が大きく、大企業や上場企業が主な取引先です。預金のために利用する個人の顧客も多く、幅広い層に対応しています。顧客のニーズ拡大に応じて、さまざまな金融サービスを扱っているのが特徴です。

また、国内最大の金融機関である三菱UFJフィナンシャル・グループを筆頭に、アメリカや東南アジアなどの海外でも業務を手広く行い、国際展開にも積極的に取り組んでいます。

例)三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行

地方銀行

地方銀行は地銀とも呼ばれ、正確には地方銀行と第二地方銀行があります。地方銀行は歴史が古く、比較的規模が大きい銀行です。

第二地方銀行はもともと相互銀行(「無尽」という個人や法人間での融資を取り持つ相互扶助システムによる銀行)だったものがほとんどで、「金融機関の合併及び転換に関する法律」に基づいて普通銀行へ転換しました。そのため、規模は小さいものの業務内容は地方銀行と変わりません。

両者ともに本店を置く都道府県を中心に支店を展開し、個人や地域の中堅企業、中小企業を主な取引先としています。地域の経済に大きな影響を与えている金融機関です。その地域の経済状況にも詳しいため、特に中小企業にとっては頼りになる相談役と言えます。

例)東北銀行、武蔵野銀行、京都銀行、福岡中央銀行

参考:銀行員.com「全国銀行一覧」
参考:e-Gov「金融機関の合併及び転換に関する法律」

ネット銀行

ネットバンクとも呼ばれるネット銀行は、実店舗を持たずにインターネット上ですべての取引ができる新しい形態の銀行です。窓口へ行かなくても入出金や取引履歴の確認などのサービスをいつでもどこでも利用できるので、従来の銀行と比べて手続きの手間を削減することができます。

また、店舗にかかる費用が省ける分、各種手数料が抑えられているのも特徴です。同じ理由で預金の金利が他の金融機関よりも高いことで知られています。ネット銀行はオンラインの取引や振り込みにも24時間対応しているため、その使い勝手の良さから貯蓄のためというよりは資金を動かすために口座を持つ方が多いです。

例)ジャパンネット銀行、楽天銀行、セブン銀行、ソニー銀行

信託銀行

通常の銀行では預金・貸出・為替に関する「銀行業務」のみ行います。信託銀行はこの銀行業務に加えて「信託業務」と「併営業務」を行う銀行です。要するに、預けた財産を代わりに管理・運用してくれる機関であり、普通銀行よりも多くの業務を行っています。

銀行としての規模は都市銀行や地方銀行の方が大きいですが、財産を専門家に管理・運用してもらえることから、自ら資産管理をする手間を省きたい経営者や資産家の利用者が多いです。

例)三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、あおぞら信託銀行、野村信託銀行

参考:一般社団法人 信託協会「信託銀行とは?」

信用金庫

信用金庫は銀行とは似て非なるものです。最大の相違点は非営利組織であること。信用金庫の利益ではなく、会員や地域社会の利益を第一としているため、手厚いサービスを受けることができます。

主な取引先は地域の中小企業や個人事業主です。その地域に住んでいる、事業所を持っているなどの条件を満たし、出資した人は会員の資格が得られます。

ちなみに出資額はだいたい1万円から可能で、信用金庫に利益が出た際には出資額に応じて利益配分がされる仕組みです。この出資金は会員をやめる時に全額返ってきます。また、預金は会員でなくても可能ですが、融資を受けられるのは会員に限定されています。

例)埼玉縣信用金庫、松本信用金庫、神戸信用金庫、しまなみ信用金庫

信用組合

信用組合も信用金庫と同じく非営利組織です。在り方もとても似ていて、地域の相互扶助と活性化を目的としています。信用金庫同様、条件を満たして出資した人には組合員の資格が与えられ、預金や融資が可能となります。

ただし、信用組合は組合員のみ利用できるため、規模はかなり小さいです。とはいえ、信用金庫よりもっとターゲットを絞った地域密着型の機関であると言えるでしょう。

組合員は「地域信用組合」、「業域信用組合」、「職域信用組合」に分けられ、各コミュニティでの相互扶助を第一に、より綿密で手厚いサポートを受けることができます。

大規模な資金調達には向いていませんが、少額の融資を受けたい場合や資金繰りの仕方が分からずに悩んでいる場合は、相談してみると親身に対応してもらえます。

例)札幌中央信用組合、あかぎ信用組合、土佐信用組合、長崎三菱信用組合

参考:一般社団法人 全国信用組合中央協会「信用組合とは」

ゆうちょ銀行

元は国営だったため、ゆうちょ銀行は全国に支店・ATMが数多く設置されています。通常貯金の口座数も約12,000万と他行と比べても突出して多く、一人で複数口座が持てるとはいえ、国民の大多数が一つはゆうちょ銀行の口座を持っていると言っていいでしょう。入出金や同行への振り込み、インターネットバンキングの使用にかかる手数料が無料なのも大きな魅力です。

ただし大半が個人口座であり、法人口座にはあまり向いていないのが現状です。その一番の理由は預入限度額が1,300万円と低いこと。これ以上に利益が上がる会社なら他行で口座を作ったほうが良いでしょう。それに加えて、社会保険料の口座振替もできません。

口座取引をする相手にゆうちょ銀行の利用者が多くない限り、事業用のメインバンクにするのは得策ではないでしょう。もしゆうちょ銀行で口座を開設する場合は、他の金融機関と合わせて利用するとそれぞれのデメリットを補えて良いと思います。

参考:ゆうちょ銀行「ゆうちょ銀行の特徴」

金融機関の選び方とオススメポイント

さて、それぞれの金融機関について基本的な内容を理解できたところで、あなたに合った金融機関を選んでいきましょう!「どこにでもあって有名だから」、「店舗から近いから」など単純な理由で決めてはいけません!あなたの目的や利用の仕方に合わせて選ぶことが大切です。ざっくりと分類してみたので、自分に当てはまるものを読んでください。

全国展開を検討しているオーナー向け メガバンク(都市銀行)

あなたの事業がかなりの規模であり、既に複数店舗持っていて全国展開を考えているのであればメガバンクがオススメです。たいていの都道府県には支店があるため、幅広いエリアで活動したい場合は利用すると良いでしょう。また、メガバンクはどれもネームバリューがあるため、会社の信用に繋がります。高額の融資にも対応しているため、新たに始めたい大きな事業などがある場合にはオススメです。

ただし、法人口座開設の審査が厳しいので、希望しても通らない可能性があります。

入出金の頻度が高いオーナー向け 地方銀行

最近になってクレジットカードや電子マネーの利用ができるサロンが増えてきましたが、まだまだ現金でのやり取りが主流ですよね。サロンによっては、安全に管理するために売上金を毎日銀行口座に入金しているところもあるでしょう。地方銀行であれば近場に支店やATMがあることが多く、安全かつ迅速に入出金ができます。また、その銀行のATMを使えばその都度かかる手数料も無料になる場合が多いです。

もっとも、別の地方に移転した際に使えなくなったり、融資を受けた際の金利はメガバンクよりやや高くなったりというデメリットもあります。

とにかく時間とお金が惜しい!というオーナー向け ネット銀行

ネット銀行には大きく分けて2種類あります。一つは前述したジャパンネット銀行などのインターネット専業銀行です。利用開始までの手続きも簡単で、提携しているコンビニなどのATMで入出金ができます。

もう一つは普通銀行が提供するインターネットサービスです。スマートフォンの普及により、近年は多くの銀行でインターネット上での取引を導入しています。利用するためには別途申し込みをしたり、ネット支店に口座を開設したりする必要がありますが、さほど複雑な作業ではありません。その銀行のATMや提携先のコンビニなどのATMから入出金ができます。

また、定額預金の金利が比較的高いので、少しでも金利の良いところを選びたいという方にオススメです。

デメリットとしてATMからの入出金の際に手数料が発生してしまいますが、取引状況や提携先のATMによっては手数料が無料になることもあるので、ネット銀行を検討する際にはどのATMで利用できるのか確認しておきましょう。同様に、振込先が同一銀行であれば手数料がかからない場合もあります。ネット銀行を選ぶうえで手数料の比較は必須です。

参考:マネーの手帳「ネットバンク(ネット銀行)のメリット・デメリットを解説」

貯蓄を作りたい、管理を任せたいオーナー向け 信託銀行

自身の財産を安全に管理・運用してくれる信託銀行は貯蓄したい人や資産(株式や不動産も含める)が膨大な人にオススメです。個人個人にあった最適な運用プランを提案してくれます。また、最近では相続の手続きを目的として利用する高齢者層も増えているようです。

信託銀行はメインバンクには向いていませんが、サブバンクとして資金を活用するのにピッタリです。また、信託銀行に預けた分の資産は委託者(財産を託す人)、受託者(信託銀行)、受益者(財産を受け取る人)のどの立場からも独立して保たれます。つまり、三者のいずれかが破産・倒産したとしても預けた財産は守られるのです。この特性から、有事の際の保険として信託銀行を利用するのも一つの手かと思います。

メインバンク向きではないという他に、提携しているATMが少ないため利便性に欠けるので入出金や振り込みといった手続きが多い人には使いづらいというデメリットがあります。融資を受けるのも難しいです。やはり、サブバンクとして口座を作るのが適切でしょう。

参考:一般社団法人 信託協会「信託を利用するメリット」

お金を借りたい、資金繰りについて相談したいオーナー向け 信用金庫・信用組合

開業したばかりの時や、新たに店舗展開をしたり、新しい設備を導入したりする時に問題になってくるのが資金調達です。

しかし、実績が少なく信用が薄い個人事業主や中小企業に対しては、メガバンクはおろか地方銀行からでさえ、融資を受けるのは容易いことではありません。また、銀行の利益を最優先にしているため、少額の融資は断られることが多いです。

そんな場合でも信用金庫や信用組合であれば前向きに融資を検討してくれます。銀行とは違って、多少経営が傾いても融資を断られたり、返済を強要されたりすることはほとんどありません。また、信用金庫・信用組合のスタッフが定期的に訪問してくれるので、その都度経営状況を報告し、相談することができます。

開業して間もない経営者や、個人事業主の方にとって利用しやすい金融機関の一つです。

ただし、貸出金利がメガバンクや地方銀行と比べて高い傾向にあります。その特性上、少額の融資が多いため信用金庫・信用組合側のコストがかさんでしまい、結果として金利を高めに設定せざるを得ないからです。とはいえ、場合によっては地方銀行より低金利なところもあるので、まずは相談してみると良いと思います。

慎重にメインバンクを選んでより良い経営を

それぞれの金融機関の特徴やメリット・デメリットはお分かりいただけたでしょうか?融資の金額や対象はもちろん、金利や手数料も長い目で見たらかなりの金額になります。こういった細かなところでもコストカットできると良いですね。そういった小さな積み重ねが経営者にとって非常に大切なことです。あなたのサロンに合った金融機関を選び、賢く経営してください。

これから開業を考えている方、金融機関の見直しを検討している方は、ひとまず目的に合った金融機関をこのコラムで見つけて、近隣にはどんな銀行や信用金庫、信用組合があるかを調べてみましょう。それで条件に合うところがあれば、まず窓口へ行って相談してみると良いですね。

事業用のメインバンクとする以上、短くないお付き合いになると思われます。担当者の対応や雰囲気なども考慮しつつ、慎重に選んでください。

※現在新型コロナウイルス感染拡大により、銀行や信用金庫への不要不急と思われる来店客が増え問題になっております。融資などの緊急を要する要件以外の来店は控えましょう。

監修:株式会社アクティベートジャパンコンサルティング アクティベートジャパン税理士法人
   税理士 尾崎 充  
   (所有資格 公認会計士、税理士、行政書士、宅建主任士、AFP)
経歴:昭和63年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業
   平成元年公認会計士第2次試験合格〔登録No.9500〕
   KPMGピートマーウィック港監査法人入社
   宅地建物取引主任者試験合格
   平成 5年公認会計士第3次試験合格〔登録No.11578〕
   平成10年尾﨑公認会計士税理士事務所開設税理士登録〔登録No.85023〕
   協立監査法人入社
   平成17年目黒区包括外部監査人、立正大学経営学部経営学特論招聘講師
   平成24年公益財団法人東京都中小企業振興公社専門家派遣事業支援専門家〔登録No.764〕
   平成28年DANベンチャーキャピタル株式会社ベンチャーキャピタリス
   創業期からマザーズ~東証一部上場(現在は社外役員)までの上場支援実績がありますので幅広く
   御支援致します。 上場会社の社外役員でもあり、株式公開答申書、資産税関係書籍等の著書も多数
   あるため高い業務品質で創業〜上場支援、法人税~資産税まで、深度あるサポートを致します。
   卓越企業、優良企業、上場を目指す経営者は、創業段階からこれらを見据えた内部統制の整備、
   資本政策、会計制度整備を行う事が極めて重要です。卓越企業、優良企業、上場を目指す経営者の
   最高の参謀役となります。