日本は言わずと知れた超少子高齢化社会です。現在は高齢者向けの美容サービスに注目が集まり、訪問美容や出張マッサージなどのサービスが少しずつ広がってきました。年を取ったってオシャレをしたいし、若く見られたいのは当然ですよね。そんな高齢者向けの潜在的な美容市場規模は統計上訪問理美容だけで784.2億円にまで上るそう!そこで今回は、高齢者向けを中心とした福祉美容サービスのアレコレをお伝えしていきます!

福祉美容とは

福祉美容とは、身体的な理由でサロンへ行けない人々のもとへ訪問して提供する美容サービスのことです。訪問理美容、出張カットなど色々な呼び方をされますが、どれもほとんど同じ意味で捉えてもらって構いません。福祉美容の中でも特に多いサービスは、カットやカラー、ヘアセットなどの髪に関するサービスです。最初に述べた通り、ヘア部門だけでも潜在的な市場規模は784.2億円という相当な可能性を秘めています。

高齢者の利用が多いですが、病気やケガ、障がい、妊娠などの理由でサロンに行くのが難しい人々なら誰でも利用できます。また、施術者は美容福祉士認定証を取得しているため、介護が必要な方でも安心して利用できるのが特徴です。

福祉美容が必要とされる一番の理由はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の維持向上です。病気や介護をきっかけに美容から遠ざかってしまう人は多いですが、ヘルスケア女性マーケティングのウーマンズラボの調査によると、年齢を重ねても美容に関心のある女性は多いことが分かります。そして、見た目を綺麗にすると高齢者が意欲的になり、より健康を促進できるという事例も確認されています。

参考:SB-J 国内ESGニュース「リクルート系列会社がNPOと「訪問美容」普及呼びかけ(2017.08.09)」
参考:株式会社資生堂 ライフクオリティービューティーセミナー「化粧療法研究所」
参考:ウーマンズラボ 女性の美容悩み 年代別まとめ(20〜80代)(1/3)

また、総務省統計局によると、日本の全人口1億2617万人のうち、3588万人が65歳以上の高齢者だとされています。(2019915日時点)実に、日本の人口の28.4%を占めており、3.5人に1人が高齢者であるということです。そして、今後20年間の間に高齢化はさらに進み、人口の35.3%が高齢者になると推測されています。

このような背景から、近年注目が集まっているのが福祉美容です。美容室の客離れが深刻化していますが、その少なくない理由が高齢により外出が難しくなった、あるいは施設に入所したことだと言います。これを解決するのが訪問美容だということです。2016年に美容師法・理容師法が改正され、サロン以外の場所でも施術ができるようになったのをキッカケに、色々な団体や施設、そしてたくさんの美容師が福祉美容に参入しています。

また、見た目に気を遣うことで、心身の健康やその人の尊厳を守ることができます。高齢者を始めとして、誰もが気兼ねなくオシャレを楽しめる時代が訪れようとしているのです!

参考:総務省統計局 「高齢者の人口」

福祉美容師になるには

まず前提として、美容師の国家資格を持っている必要があります。美容師免許取得後、今度はNPOや厚生労働省認定の協会が発行している福祉美容師に関する資格を取ります。団体によって呼び方も様々ですが、身体の不自由な方であっても安全かつ適切な施術を受けてもらうために大切なノウハウを得られるという点では同じです。美容師免許に加えて、諸団体に認められた福祉系の資格を持っていれば、誰でも福祉美容師になれます。

ちなみに、福祉美容師の中にはどのようなものがあるのかというと、主なものは「福祉理美容士」、「ハートフル美容師」、「ケア理容師」、「認定福祉理・美容介護師」の4つです。それぞれ、主催・認定している団体のリンクを貼っておきました。どれも、高齢者や体の不自由な方により良いサービスを提供するためという目的は同じなので、自分が取得しやすいと思ったものを取るのが良いでしょう。どの資格を得たとしても、自宅への訪問美容や病院、介護施設での働きに役立ちます。

以下に、研修の主催や資格の発行をしている団体を載せておきます。興味のある方はぜひリンク先をご覧になってください。

福祉美容師に関わる研修・資格情報

「福祉理美容士」日本理美容福祉協会

「ハートフル美容師」全日本美容業生活衛生同業組合連合会

「ケア理容師」全国理容生活衛生同業組合連合会

「認定福祉理・美容介護師」医療福祉情報実務能力協会

また、非常によく似たもので介護美容師というのもあります。介護美容師の仕事内容もほとんど福祉美容師と同じです。ただし、利用者が要介護者になるので、介護に関する相応の知識が必要になります。

介護美容師になるためには、やはりまず美容師の資格を取得する必要があります。そして、介護に携わる者として重要な専門知識も身につけなければならないので、「介護職員初任者研修」か「介護職員実務者研修」を修了するのが望ましいです。

実際は、介護関係の資格を得ていなくても美容師免許さえあれば介護美容師を名乗れるのですが、車椅子介助や心のケアなども求められるので、やはり相応の資格を得ておくべきだと思います。また、地域によっては介護関係の資格がないと介護美容師として活動できない場合もあるので、そういった意味でも資格は持っておいた方がいいでしょう。さらに上を目指したい方は、介護福祉士やホームヘルパーの資格を取得し、実際の現場で役立てているようです。

サロンの取り組みとしてできること

ここまでは訪問美容について述べてきましたが、やろうと思ってもすぐに実行に移すのは難しいですよね。よって。ここからは、サロンでできる高齢者向けのアプローチをご紹介していこうと思います!

高齢者をターゲットにしたメニューの増加

高齢者の多くが抱えるお悩みから見ていきましょう。代表的なものを3つご紹介すると、第一に「薄毛」、次に「シミ、シワ、たるみ」、それから「白髪」です。薄毛は男女ともに共通する悩みですね。加齢とともに現れるシミ、シワ、たるみは30代後半頃から気にし始め、40代以降は多くの女性が悩んでいます。白髪に関しては、4060代に多いです。ただし、孫が生まれたことで「孫のために若く見られるおじいちゃん・おばあちゃんでいたい」と白髪染めを始める方も一定数います。

これらを踏まえたうえで、高齢者向けにより良いアプローチをしてもらえればと思います。

たとえば、ボリューム感を出したいと思った時に多くの方が一番に思いつくのはパーマだと思います。ここでただパーマをかけるのではなくて、パーマと相性の良いシャンプーやコンディショナー、スタイリング剤などをオススメしてあげると喜ばれるのではないでしょうか?

また、髪や頭皮に栄養を与え、ハリやコシを取り戻す美容液を勧めるのも良いと思います。ボリュームダウンしてしまう一番の原因は髪が細くなることですよね。よって、髪を太くする美容液を店販で用意し、自宅でのケアとして使ってもらえれば店販の売上アップにもなります。また、高齢者の中には、正しいヘアケアを知らない方も多くいるので、自宅でのケア方法を教えてあげるとより効果が出て良いかもしれません。

シミ、シワ、たるみは女性にとって永遠の敵。エステサロン等に行くのは比較的若い世代に多いですが、ことフェイシャルケアに関しては年齢を重ねた女性にも人気です。「これ以上シワを増やしたくない」、「少しでも老化を遅らせたい」という意識からでしょう。

特に首のシワは年齢が感じられるということで、気にされる方が多いです。最近は顔だけではなく首にも照射できる美容医療マシンなんかもあります。フェイシャルとセットで売り出してみてはいかがでしょうか?紫外線や乾燥、姿勢によってシワができてしまうため、普段からできるケア方法を教えるのも良いと思います。あるいは、肌の内側からのケアとしてサプリなどを店販に置くのもアリです!

白髪に悩んでいる方が比較的若い場合は、黒髪に戻せることもあります!ストレス等が原因であればヘッドスパや頭皮マッサージでの改善も有り得るので、効果の出やすいマッサージの仕方などを研究してみる価値はあるのではないでしょうか。

また、白髪染めをされる女性に対しては、髪が細くパサパサにならないように、トリートメントをセットにすると喜ぶ方は多いはずです。白髪染めは定期的に通わなければならないものなので、髪や頭皮への刺激を和らげる酵素を使うサロンもあります。このように長く通っていただける工夫が必要ですね!

それから、年齢を重ねるにつれて美容よりも健康を意識し始める傾向にあるそうです。健康を維持するための機械やサプリ、ドリンクなどの購入が増えます。エステサロンやリラクゼーションサロンであれば、漢方を取り入れたり、健康食品を扱ったりするところもあるでしょう。また、健康に良いストレッチや体操を始めるのも効果的だと思います。このように、サロンを中心にして健康面から美をサポートできるものを充実させていければ良いですね。

高齢者向けのサービスや器具等はまだまだ多くありません。今、新しいことに乗り出せば発信源はあなたです!高齢化が進む今の時代に新しい流行、新しい考えを広めませんか?

バリアフリー化

店舗前の階段にスロープを付ける、車椅子でも利用できるトイレを設置するなど、バリアフリーなサロン作りを始める方がちらほらと出てきました。さらに!ごくわずかですが、ユニバーサルデザインを導入したサロンもあります。高齢者や障がい者、怪我人だけでなく、子どもや外国人のお客様などすべての方々に気持ちよく利用してもらえるようなサロン作りが始まっています!

なかにはそれだけでなく、サロン近辺であれば無料で送迎するサロンもあるくらいなのです。実は、サロンとお客様の自宅や施設を行き来する車両を導入することで、国から助成金を得ることができます。普通車から専用車両への買い替えでも対象になります。この機会に始めてみてはどうでしょうか?

高齢の方をターゲットにするならバリアフリーは必須と言えるでしょう。また、改修や店舗移動、あるいは新しくサロンをオープンすることを考えているオーナー様は、ぜひこの機会にユニバーサルデザインのサロンにしてみてはいかがでしょうか?2020年現在なら、レイアウトを変えるだけでも助成金が下りる場合もあります。これが当たり前になってからでは遅いのです!今始めれば、それが他の競合サロンとの差別化になり、売り出すポイントにもなります。どうぞ検討してみてください。

また、福祉に力を入れる場合は国から助成金が出るケースが多々あります。助成金については以前公開したコラム経営者は情報を待つだけ!助成金・補助金情報を効率的に収集する方法で詳細を説明していますので、ぜひ読んでみてください。その他、ビューティパークカレッジではサロンで申請可能な助成金情報を提供しています。気になる方はお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

孫のために、孫と一緒に

高齢者に多い傾向として、新しいものに対する抵抗感が挙げられます。どんなに便利なものであっても、慣れ親しんだものの方が良いと考えるようです。

しかし、そんな高齢者たちを動かせる存在がいます。それは「孫」の存在です。子供に対しては厳しく接してきたという人であっても、孫は猫可愛がりするという方は多いと思います。目に入れても痛くないほど可愛い孫のためなら、おじいちゃんもおばあちゃんも意欲的、行動的になるのです!

先ほど、孫のために白髪染めを始めると書きましたが、今まで乗り気ではなかったことも孫が関われば話は別です。「お孫さんにとって自慢のおじいちゃんになりませんか?」や「お孫さんとの写真は綺麗な姿で♪」などと宣伝すれば、サロンに来やすくなるでしょう。

最近は親子カットも多いですが、祖父母割などお孫さんとのセットカットも新しくて良いかもしれません。お孫さんをサロンに連れて行ってもらっている間は、パパやママも自由な時間が取れるでしょうし、利用してくれる方は一定数いると思います。また、七五三や入学式、卒業式などでの着付け、ヘアセットをプレゼントできるギフト券などを用意するのもオススメです。

お年寄りのキレイと元気は日本の活力

美容面から健康をサポートできることは、ここまで述べてきた通りです。人口の4分の1以上を占める高齢者が元気だということは、日本の社会そのものも活力が漲っているということに他なりません。これからも高齢化はどんどん進行していくだろうと思われますが、そんな中でもキレイで元気なお年寄りが増え、健康寿命が延びれば、日本の未来は明るいものとなるのではないでしょうか?

また、老後の生活を心置きなく楽しんでもらうためにも、美容は欠かせません。近年、終活という言葉をよく耳にするようになりましたが、その定義通り「最後まで自分らしく生きる」ことができるよう、手助けすることが今後の日本において求められてくることだと思います。高齢化社会での美容の役割はますます大きくなるでしょう。より良く老後を過ごすための一助を、サロンで働く皆さんと担っていければと思います。

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