美容師が働くうえでもっとも重要なのが「美容師法」です。これを守らないと罰金や業務停止、営業停止などの罰則が適用されてしまいます。場合によっては業務停止命令や美容師免許の剥奪などの重い処分を受けることもあるのです……!近年は美容師法を守らずに摘発される事例が多く、書類送検や逮捕される人も増えています。法に則って正しく堅実に営業するためにも、今一度法令について考えてみましょう。

美容師免許を持っていない

美容師免許を持っていない人は、不特定多数の方にカットやカラー、ヘアセットはもちろんのこと、シャンプーやメイク、まつ毛エクステなどの施術はできません。ですから無免許のアシスタントができるのは、掃除や洗濯、電話対応、受付業務のみです。

アシスタントというとシャンプーやマッサージ、ロッドの受け渡しなどの補佐業務を思い浮かべる方も多いですが、美容師法の観点からすると無免許者はお客様に触れることができませんし、お客様に直接触れる櫛やハサミ、カミソリ、ロッドなどに触ってはいけないことになっています。

サロンとしては人手不足やアシスタントの成長のために簡単なサロン業務は任せたいと思うかもしれませんが、万が一保健所に通報されたり、立ち入り検査が行われたりした場合に受ける罰則を考えると、やはり美容師法は守るべきです。

また、法律違反をすることはお客様への信用にも関わります。信用できないサロンに行こうとするお客様はいないでしょうし、罰則よりも大きな損失になることは間違いありません。

美容所以外での施術

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「美容師の友人にカットしてもらった」という経験を持つ人は一定数いますが、美容所と認められていない自宅や友人の家などで施術をするのは法律違反です。美容師法では、美容所以外での施術を原則として認めていません。

例外として、病気や育児などの理由で美容所に来ることができない人、山間部や離島などの美容所がない地域に住む人、老人ホームなどの社会福祉施設に入所している人に対しての出張・訪問カットが認められています。また、結婚式の直前に行うヘアメイクや、テレビや舞台の出演者に対して直前に行う施術も可能です。

ただし、保健所によっては事前に届け出が必要な場合や、講習を受講しなければならない場合があります。そのため、出張・訪問サービスは独自の判断で勝手に始めるのではなく、開始前に必ず地域の保健所に確認しましょう。

管理美容師の不在

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常時2人以上美容師がいる美容室では、管理美容師を置かないといけません。ヘルプや時短勤務などで一時的に働く美容師の数はカウントしないのですが、オーナー自身が美容師として常時働いている場合はオーナーも常時働く美容師の1人とカウントします。

常時働く美容師が2人以上いるにも関わらず管理美容師がいない場合は、30万円の罰金や閉鎖命令が出される恐れがあるので気をつけましょう。最初は1人で開業して、その後新たに美容師を雇い入れた時も、管理美容師を置かなければいけません。また、雇っていた管理美容師が辞めてしまった場合も別の管理美容師を探す必要があります。

そのため、最初から自身で管理美容師の資格を取っておくと手続き等が少なくて良いでしょう。管理美容師の資格を取るには、美容師免許取得後に3年以上の実務経験があること、管理美容師講習会の参加・修了が必要です。

美容師・理容師の働ける場所

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2015年に行われた理容所美容所の重複開設を認める法律改正によって、201641日から1つの施設で理容所と美容所を兼ねることができるようになりました。重複開設の条件は、理容所及び美容所に必要な衛生上の条件を満たしていること、そして理容師及び美容師の資格を持つ人だけが働いていることです。

つまり、どちらか一方の資格しか持たない人は働けません。無資格者と同じ扱いになるので、お客様に触れることすら禁じられています。しかし、2021年度には重複開設がしやすいように、一方の資格を持つ人がもう1つの資格を取りやすくしたり、教育機関での指導内容を変更したりするなどの見直しがされる予定です。

また、常時従業する有資格者が2名以上いる重複サロンでは、管理美容師はもちろん管理理容師を置くことが必須になります。重複サロンに限っては1人が管理美容師と管理理容師を兼任することが可能です。

重複サロンは原則として年に1回以上の立ち入り検査があります。その時にこれらのことを守っていないことが発覚した場合は、閉鎖命令が下されることもあります。ちなみに美容師法と理容師法のどちらか一方だけに違反していたとしても、サロン全体の営業ができなくなるので注意が必要です。

美容所におけるネイル・エステサービス

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近年は他ジャンルの美容サービスも提供するトータルビューティーサロンが増えてきました。美容室やアイラッシュサロンなどでもネイルやエステを導入しているところは少なくありません。美容師やアイリストと違い、ネイリストやエステティシャンは無資格でもなれる職業ですが、美容所においては違います。上述した通り、美容所では美容師の資格をもつ人以外お客様に触れてはいけないので、ネイリストやエステティシャンであっても美容師の資格が必須なのです。

飲み物・お菓子のサービス

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美容法や理容法では、美容所・理容所の水準を満たした衛生維持が定められています。近頃は、ちょっとした飲み物やお菓子などをサービスで出す美容室などが増えましたが、その提供の仕方には気を配らなければなりません。たとえば、飲み物をカップに注いで提供するのは衛生的な観点からNGです。

美容室はドライヤーをよく使うので、細かい埃や髪などが宙に舞いやすくなっています。埃が浮いた飲み物は法律云々以前にそもそも飲みたくないですよね。法律順守というのもそうですが、お客様のためにも飲み物をサービスする時はペットボトルなどの蓋つきのものが良いでしょう。お菓子も同じです。個包装になっている未開封のものであれば問題ありません。

また、最近になってカフェ併設サロンが増えたこともあり、有料でドリンク等のサービスをしているところが見受けられますが、何も手続きすることなく販売するのは違法です。喫茶店営業許可または飲食店営業許可が必要になります。オプションとしてではなくカットやカラーなどのメニュー料金内にサービス料金が含まれている場合も同様です。

飲食物に関しては食品衛生法や各自治体の条例も関わってくるので、どうしてもサービスをしたいという場合は保健所に確認することをおすすめします。ちなみにカフェとしても営業したい場合は、下記のコラムでオープン時の注意事項や成功させるためのコツをご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

関連:サロンの魅力向上!カフェ併設で集客と売上をアップさせるポイント

眉カラー

明るい色に染めたお客様から眉カラーを頼まれた経験がある方は少なくないのではないでしょうか。しかし、これは皆さんご存じの通り眉カラーは違法行為です。美容室で扱うカラー剤は髪の毛専用のものなので、頭髪以外に使用してはいけません。

実際、髪の毛のカラーでは何も問題がなくても、眉カラーをした途端に腫れたり膿んだりしたという人もいます。自分に対して行ったのであれば自己責任で済みますが、お客様に対して眉カラーを施術して問題が起きた場合、施術を担当した美容師はもちろん、サロン全体にまで影響が及びます。当然ながら保険も使えません。

眉カラーについて相談された場合は、市販のものでセルフカラー・脱色することを勧めたり、眉マスカラを紹介したりするなど、別の方法で対応するようにしましょう。

従業員の休憩・残業時間

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美容室ではお客様の入り状況によって忙しさが変わるため、決まった時間にまとまった休憩を取れるということは滅多にありません。また、労働時間もきわめて長いです。そのうえ新人美容師は、カット練習などで長時間の居残りが発生します。

よく、美容師の労働環境について問題になっていますが、実際のところはこのような状況は暗黙の了解として見て見ぬふりをされていることが大半です。とはいえ、最近は一般的な会社と同じように整備された環境の美容室もあります。このような時代の移り変わりとともに、労働基準監督署に通報されるケースも増えてきました。

広く世間に認知されている労働基準法の内容と言えば、下記の5つです。

18時間以内、週40時間以内の労働(常時10人未満の場合は週44時間)
・上記の労働時間を超える場合は残業代を支給しなければならない
22:005:00までの間に労働させた場合は、通常の25分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない
・労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならない
・雇用した日から6ヶ月間継続勤務をし、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して10日の有給を与えなければならない

多くの美容師は18時間以上、週40時間以上働いていますが、残業代が正しく支払われていないということが多々あります。というのも、各種手当と相殺する形であらかじめ雇用契約を結んでいたり、練習時間と残業の境目が曖昧だったりするからです。

ですが、法律に照らし合わせれば、時間外に働いていたという証拠(タイムカードやメールなどのやり取り、写真など)があればその分の残業代を請求することはできます。また、居残り練習についても自主的に居残りしている分には問題ないのですが、強制された場合(上司や先輩からの指示、新人は居残りが当たり前という暗黙の了解など)は一般企業での研修と同じ扱いになるので残業代は発生するのです。

実際のところ、居残り練習は将来の自分のために何よりも必要なことであり、上司や先輩から指導を受ける時でも無償で教えてもらっています。サロン側としては貴重な時間やお店の資材、そして場所を提供しているので、残業代を出す必要はないと考えるのも自然なことです。

一方で、スタッフの技術力アップは売上向上に繋がるので残業代を出すに相応しいと考えるオーナーもいるでしょう。どちらが正しいとは言えないグレーな世界ではありますが、法律的には残業代の支給が妥当であり、残業代が未払いの場合はスタッフから請求される可能性もあるということを頭に入れておいてください。

休憩時間についても同様です。繁忙期や休日は特に休憩を取るのが難しいですが、美容師の仕事は集中力を要します。休憩もなしに連続でお客様を担当していれば、疲れや集中力の低下からミスしてしまうこともあるでしょう。特に、休憩を取れなかったことが原因でお客様に怪我をさせてしまった場合、笑い事ではありません。どんなに忙しかったとしても、予約の制限を設けたり新たに人を雇い入れたりするなどして、適度に休憩が取れる環境を整えることが一番です。

法律を守り、信頼のおける美容室に

今回は法的な観点からの「美容室でやってはいけないこと・気をつけるべきこと」について述べてきました。美容室は法律違反をしているケースが多く、かなりグレーな業界ではありますが、時代の変化とともにクリーンな健康経営が主流になりつつあります。これを機に今一度美容室の在り方を見直し、お客様やスタッフ全員が気持ちよく過ごせる経営ができると良いですね。

参考:e-GOV「美容師法」
参考:e-GOV「労働基準法」
参考:内閣府「第3期規制改革実施計画(平成27年6月30日閣議決定)」