世間では育休や時短勤務の制度が整備されてきましたが、美容室ではまだママとして働ける環境が整っているとは言えません。ですが、積み上げた技術や経験、指名してくれるお客様をそのままにしておくのはもったいないと思いませんか?サロンにとっても、コスト削減や売り上げアップに繋がって良いことばかりです。そこでママでも復職しやすい働き方をまとめました!ママさんやオーナーの方々はぜひ参考にしてください。

ママ美容師の本音

育児や家事をこなしつつ、美容師として働くことに対して世の中のママ美容師たちはどう思っているのでしょうか。ママ美容師を応援するメディア「MAMASTA!」が実施した全国のママ美容師1,000人以上を対象に行ったアンケート調査結果を見てみましょう。

引用:MAMASTA! 「『ママ美容師の復職に関する実態調査』1000人アンケート集計結果」
※「復職に対する気持ち」のアンケート結果をグラフにしたものを上記サイトから引用しています

もっとも回答が多かったのは「美容師をやめたくない」という意見でした。「仕事を休むことが不安」という声もありますが、これは現場復帰している(あるいは復帰を検討している)からこその意見です。また、「短い時間でもいいから働きたい」、「今すぐ復帰したい」という回答も多く、美容師の仕事を続けたいと考えている女性が大半であることが分かります。

この結果から、ワークライフバランスの取れた働き方ができる職場づくりは美容師業界において急務だと言えるでしょう。

ママ美容師が働くうえでの課題

美容師として働きたいというママ美容師が多い一方で復職している人は少ないです。また、復職できたとしても正社員ではなくパートとして働かざるを得ず、待遇に不満を抱いて結局美容業界から去っていく人も多くいます。その理由は何なのでしょうか。ママ美容師が気持ちよく働ける環境をつくるために解決すべき課題を洗い出していきます。MAMASTA!に寄せられたママ美容師の声を分類してみました。

①保育園が見つからない
②保育園の送り迎え
③子どもの急病
④セミナーの時間や練習時間の確保ができない
⑤フルタイムで働くのが難しい
⑥給料が低い、低賃金

ママ美容師の皆さんが悩んでいるのは主に上記の6つです。

旦那さんが在宅ワーカーだったり、実家暮らしで親御さんの援助が受けられたりする場合を除き、働きに出ようと思ったら子どもを預ける必要があります。しかし、ニュースでもたびたび取り上げられているように待機児童の数はまだまだ多く、一旦離職してしまうと預けられる場所を探すのは困難です。

特に、美容師の仕事は土日祝日が一番のかき入れ時ですが、認可保育園だと日曜祝日は児童の受け入れをやっていません。したがって保育園を探すのはさらに難しくなりますし、運よく認可保育園に入れたとしても、保育料の高い無認可保育園や託児所を掛け持ちして預けざるを得ないのです。

子どもを保育園に送る時は良いのですが、迎えに行く時間は美容室の営業時間よりも早いことがほとんどなのでサロン全体の協力が必要不可欠です。お客様やスタッフの理解と協力が得られないと、フルタイムで働くのは厳しいでしょう。パートタイムで働いたとしても、たとえばお店が混んでくるタイミングで退勤するのは気が引けますよね。

しかし、お迎えの時間が間に合わなければ延長料金が発生してしまいます。延長保育は利用可能な枠数が限られていたり、料金の基準が月極めだったり一日単位だったりと、保育園によってさまざまです。延長15分につき100円の公立保育園もあれば、30分で1,500円の無認可保育園もあります。自治体や保育園の種類によって差がありますが、延長料金が少なくない出費となることは確かです。

また、幼い子どもはすぐに体調を崩します。前日までは元気に遊びまわっていたのに、翌日になっていきなり熱を出すなんていうことはよくあることです。体調の悪い子どもを保育園等に預けることはできないので、仕事を休んだり早退したりせざるを得ません。子どもの急病にも理解があり、抜けた穴をフォローしてくれるサロンを見つけることが大切ですが、そのようなサロンはまだまだ少ないのが現状です。

家事や育児も両立するとなると、就業時間外に仕事関係の時間をつくるのは難しくなります。そのため、新しい技術やトレンドを取り入れたり、薬剤などについて学んだりする機会を逃してしまいがちです。また、産休や育休が明けた後、いきなり仕事を再開することに不安を抱える人もいるでしょう。しかしセミナーに参加したり、残業して練習したりする時間を取るのはなかなかできない場合がほとんどです。

日本の社会においてフルタイムで働くということは、残業ができること前提である場合がほとんどです。特に美容室の場合は終業後もサービス残業として自主練習をしたり、時にはカタログ等の更新のために撮影をしたりすることもあります。しかし、小さな子どもがいる場合は残業や休日出勤は厳しいでしょう。

そのため、パートやアルバイトといった非正規雇用形態でしか働くことができず、低賃金に苦しむママ美容師は多いです。ただでさえ保育料金などでお金がかかるのに給料が低くては、どんなにやりたいと思っている仕事でも続けることは困難になります。

参考:MAMASTA! 「『ママ美容師の復職に関する実態調査』1000人アンケート集計結果」
参考:保育地図「保育園の基礎知識~預けられる時間や料金は?~」

ママ美容師が働きやすい環境をつくるには

上記で述べたようなママ美容師が抱える悩みや問題を解決するためにはどうしたら良いのでしょうか。厚生労働省が平成27年に発表した資料によると、出産や育児で離職した女性が働き続けられるようにするためには「両立できる環境」「活躍できる環境」が必要だといわれています。では、これら2つの環境を整えるためには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。より具体的に見ていきましょう。

参考:厚生労働省「女性の再就職・再雇用」(pdf)

両立できる環境

①保育援助

保育園に預けることができない場合も視野に入れて、美容室に託児所を併設したり、近隣の保育園と提携して入園枠を確保したりするなどの工夫があると良いですね。最近では派遣の保育士もいるようなので、そういった制度を利用して日曜日だけサロンに来てもらうのも良いでしょう。

これらの取り組みはママ美容師だけでなく、小さな子どもを持つお客様にとっても有効なアプローチになります。託児所や提携保育園で一時的に預けられるとなれば、カラーやパーマなどの長い施術でも安心して受けられます。また、保育園に預けるのにも少なくない費用がかかるので福利厚生の一種として保育園にかかる料金の一部援助をするのも良いかもしれません。

②タイムスケジュールの調整

子どもがいる以上、いくらでも遅くまで残れるというわけではありません。生活が子ども中心になるからです。ですから、きちんと希望通りの時間に帰れるようにスケジュールを組むことが求められます。また、子どもの急病にも対応できるように、急に休んだり早退したりしてもサロンが回るような体制を整えておくことも必要です。

③休暇中の情報提供や復帰後のサポート

産休や育休中であっても辞めていなければサロンの一員です。新しい薬剤や設備を導入したり、新たな方針が定まったりした場合には、休暇取得中のスタッフにも知る権利があります。復帰後、スムーズに元の仕事に戻れるようにするためにも、サロンに何か新しい動きがあればその都度報告・連絡をするようにしましょう。

また、復帰した後も時間外に行う定例ミーティングや研修などに参加するのが難しいママ美容師は多いです。そのため、議事録や講義メモをメールなどで送るのも一つの手かと思います。それから、復帰の日がはっきりしたら指名のお客様に通知したり、優先的に新規のお客様を担当できるようにしたりなどの気遣いがあると、復帰直後から売り上げに貢献しやすくなるでしょう。

④違う働き方も用意する

フルタイムで働くのは難しいけれど、せっかくスタイリストになったのにアシスタントの仕事ばかりしたくないというママ美容師も多いです。したがって、パートやアルバイト以外の働き方を提案しても良いのではないでしょうか。たとえば面貸しで活動するフリーランスのように指名のお客様だけを担当してもらい、施術料金の何割かを渡すという形も考えられます。

活躍できる環境

①ママ美容師ならではの発信

ママ美容師だからこそ伝えられること、アドバイスできることはいろいろあると思います。ママ美容師としての苦労や葛藤、それとどう向き合っていったのかなど、若手の女性美容師であれば知りたい人が多いでしょう。そういった内容をまとめてセミナーを開催したり、ママ美容師同士で交流を深める場をつくったりすれば、美容師を諦めずに新しい働き方を模索する人が増えて、より女性が働きやすい業界になるのではないでしょうか。

また、ママ美容師ならではの共感ポイントなどもあるはずです。同じ子持ちの女性にカットしてもらいながら話をしたいというお客様も少なくないと思います。他には、ブログなどでママさんでも手軽にできるアレンジやおすすめのカラーなどを紹介するのも良いでしょう。

近くに幼稚園が多い場所なら、平日の昼間は近隣のママさんをターゲットに集客してみるのも一つのアイデアですね。子どもを送った後や迎えに行く前に美容院に寄れば、子どものことを気にせずにくつろいで施術を受けられます。子どもを預けているうちに髪を綺麗にしたいママさんと、限られた時間で働きたいママ美容師が繋がれるような環境ができると、子育てをしながらでも働きやすくなると思います。

このようにママ美容師だからこそできることを見つけて取り組めば、やりがいにも繋がるはずです。

②完全歩合制にする

社員とパートやアルバイトを比較するとどうしても給与面での待遇に差が生じます。しかし、仕事内容は社員のスタイリストと変わりないケースが大半ではないでしょうか。純粋に時間の分だけ差し引かれているならまだしも、パートやアルバイトの給料が低いのは仕事内容や時間より肩書きによるものが大きいと思います。それでは技術職の良さがなくなってしまいます。

しかし、もっと彼女たちのサロンに対する貢献度を考えてみても良いのではないでしょうか。子どもが生まれても美容師の仕事を続ける人は、この仕事が本当に好きな人、ひいては一定量の技術を持つ人です。ですから、給料に関しては完全歩合制にして技術職ならではの配慮をするとママ美容師も働きやすいでしょう。限られた時間の中でできるだけ稼ごうとするのでやる気が高まり、結果としてサロンの売り上げも増すと思われます。

③福祉美容を始める

福祉美容とは、身体的な理由でサロンへ行けない人々のもとへ訪問して提供する美容サービスのことです。訪問美容とも呼ばれています。その特性上、高齢者施設や病院に赴くことが多いので、お客様の来店サイクルに合わせる従来の働き方とは違い、自分の働ける曜日や時間に合わせて仕事ができます。

訪問といえど、自宅からなるべく近い場所が勤務地となるよう調整もしてくれるので、子育て中のママ美容師がたくさん活躍しているのです。高齢化が進む現在、福祉美容の需要はどんどん高まってきており、常に複数の求人が出ています。美容師として働きたいけれどなかなか条件に合う美容室が見つからないというママさんはぜひ福祉美容師になることを検討してみてはいかがでしょうか。

サロンで福祉美容を取り入れる場合、あるいは福祉美容師として独立・開業する場合は、訪問先の市区町村の保健所に活動申請を行わなければいけません。届け出に必要なものも市区町村ごとに違うので、必ず事前に窓口で確認しましょう。

福祉美容師になる方法など、詳しいことは「美容の力で高齢化社会を健康に!今後の需要が高まる福祉美容サービス」をご覧ください。

④スキマ時間を活用する

実力や向上心はあるけれどセミナーに参加したり、自主練習のために遅くまで残ったりできないママ美容師は多いです。しかし、保育園に送ってから出勤するまでの時間や子どもが寝た後など、多少のスキマ時間は作れるのではないでしょうか。このスキマ時間を利用して新しい知識を得たり、技術を学んだりできるのがhairVRです。

VRを利用した美容師向けの教育サービスで、カットやカラー、パーマの仕方を実際の施術を見ながら学ぶことができます。VR視聴が基本ですが2Dでも視聴できるので、スマートフォンやタブレット端末さえあればいつでもどこでも好きなように勉強できるのです。hairVRのように現代社会ならではの便利なツールを使えば、家事や育児をしながらでも美容師としてのキャリアアップが期待できます。

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ママ美容師の雇用がサロンにもたらす利益

このようにママ美容師が活躍するためにできることはたくさんあります。もちろん、そのためには多少なりとも手間や費用がかかりますが、それ以上の見返りがあるはずです。たとえば、採用や育成にかかるコストカット、優秀な人材確保・流出防止などが挙げられます。したがって、サロン側は女性を雇う時点で出産・育児のことも見据えて復職しやすく活躍できる環境を整えておくべきだと言えるでしょう。

ママ美容師を中途採用する場合も同じです。ワークライフバランスを保てるように今回ご紹介したような取り組みを行い、育児に理解のある職場にする必要があります。双方のためにも、ママ美容師がいきいきと働けるサロンづくりをしていってください。