美容師・エステティシャンの多くは手荒れに悩んでいます。一度手が荒れ始めるとなかなか治らず、お客様からの評判も下がってクレームに繋がることも……。手荒れが原因でこの業界を辞める人も一定数います。また、両者ほどではないですがネイリスト・アイリストにも共通する悩みであり、手荒れの治療・改善と日常ケアは必須です!今回は手荒れの原因から考える対策方法をご紹介するので、悩んでいる方は必見ですよ!

美容業界に多い職業病「手荒れ」

冒頭で述べた通り、美容師・エステティシャン・ネイリスト・アイリストに共通する悩みが手荒れです。お客様の体に触れるたびに何度も行う消毒や洗髪、肌に合わない薬剤やオイルなどが原因として挙げられます。

手が荒れることで仕事に支障をきたし、辞めていく方も少なくありません。たかが手荒れとは侮れない問題なのです。ましてや、新型コロナウイルスによる感染被害抑制のために、現在はどのサロンも今まで以上にアルコール消毒を行っているのではないでしょうか。すると手荒れが加速してしまい、指先がパックリひび割れて傷ができるので、余計に感染リスクが高まります。

そもそも、どの仕事もお客様の体を預かる大切な仕事です。荒れた手による施術が原因でお客様の体に傷をつけてしまうなんてことがあってらいけません!気持ちよく安全に施術を受けてもらうためにも、日頃からの手荒れ対策は必要不可欠です。お客様のことも考え、綺麗な手を維持できるようにしましょう。次項から対策方法をご紹介していきます。

手荒れの種類と発症したら一番にすべきこと

手荒れには大きく分けて3種類あります。一つめは手の水分や油分の不足によって起こる乾燥やひび割れ、あかぎれ。二つめは刺激の強い物質が角層から侵入して起こる「刺激性接触皮膚炎」、そして三つめが特定のアレルゲンが原因で起こる「アレルギー性接触皮膚炎」です。

初めの2つは誰にでも起こり得るもので、水仕事や手洗い・消毒が多い人に発症しやすい傾向があります。後者はパッチテストをしてみないと分かりませんが、赤みや痒みが出ているのならばアレルギー性の可能性が高いです。アレルギー性の場合、少量であっても皮膚についてしまえば発症してしまいます。

したがって、一般的に手荒れ対策として行われている保湿用ハンドクリームの塗布やゴム手袋の着用だけでは、すべての手荒れをカバーできるわけではないのです。その原因によっては個人の努力や対策ではどうにもならない場合もあります。ですから、手荒れの症状が出てきたら、早い段階でオーナーに相談しましょう。

アトピー性皮膚炎などの体質的なものではなく仕事が原因の場合、放っておいても悪化する一方です。初期の段階で早めに手を打つことが非常に大切になります。

また、責任者側もスタッフの様子や健康管理には普段から注意しておいてください。自分からはなかなか言い出しにくいという人や、「このくらいなら大丈夫」と軽く見ている人もいるかとしれません。

参考:皮膚科Q&A「かぶれ」

業務改善として取り組めること

仕事をするうえでどうしても必要な作業工程や薬剤等があると思います。だからといって我慢して続けていたら、結果的にお客様を不快にさせたり傷つけたりしてしまう恐れもあるのです。よって、一人でも手荒れが起きたらその治療はサロン全体で取り組むべき課題だと言えます。そのためにも手荒れの症状から原因をしっかりと把握することが大切です。後述部分を参考に、原因ごとに合った対策をそれぞれ取ってください。

使用する薬剤やオイルの変更

先ほど、手荒れには刺激性のものとアレルギー性のものがあると述べました。使用する品によってはそれらを引き起こす化学物質が多く含まれているものもあります。まずはアレルゲンが入っていないかどうかを確認しましょう。少量でもアレルギーを引き起こしてしまうため、お客様にも被害が及ぶ恐れがあるからです。もしアレルゲンが入っているのならば別の品に変えることをオススメします。

また、刺激性皮膚炎だった場合もやはり低刺激のものに変えることを検討した方が良いでしょう。手のバリアをしている角層から刺激性物質が入り込むことで炎症が起こるのですが、現在はこの角層バリアの機能が弱まりやすい環境にあります。その分発症リスクも高まるということです。使い続けていれば他のスタッフも次々と手荒れを起こし、業務全体が滞ったり、顧客満足度が下がったりしてしまうかもしれません。

仕事の分担を見直す

手荒れの原因は仕事内容の偏りにあるかもしれません。たとえば洗髪を担当する回数が著しく多いスタッフはいませんか?一人に負担が集中しないように、適切な仕事分担をしましょう。また、手荒れの症状が出た場合は、洗髪やフェイシャルマッサージなど刺激を受けやすい仕事や直接お客様の皮膚に触れる仕事はなるべく避けた方が良いです。

そのため、普段とは違う体制をつくって仕事を振る必要があります。一刻でも早く症状が改善するように、サロン全体でカバーしていきましょう。手荒れが治るまではなるべく手の負担が少ない仕事に専念し、時には裏方に徹するのも大切なことです。

それでも仕事を回すのが難しい場合には、生産性や効率をアップさせるために新しい設備や機器の導入を検討しても良いかもしれません。たとえば今までハンドで行っていたエステの一部を機械で行うようにするといったように、スタッフの健康と生産性の向上を図ることもオーナーとしての大切な務めなのではないでしょうか。

ちなみに2020年になって、厚生労働省管轄の「業務改善助成金」の対象が広がりました。申請が通れば新たな設備や機器の導入資金を一部または全額、国が負担してくれるのです。詳しくは助成金アシストのページをご覧ください。

使用する道具を変える

手荒れ防止のための道具で一番分かりやすいのは手袋ですね。ゴム手袋でアレルギーが起こることについてはご存じの方も多いのではないでしょうか。天然ゴム製の手袋にはラテックスという成分が含まれています。これが手湿疹やかぶれを引き起こすアレルゲンです。今までは何ともなかったという人でもある日突然アレルギーになる可能性があります。

そのため、ゴム手袋よりは塩化ビニル製の手袋の方が安全です。さらに、薄い布製の手袋を塩化ビニル製の手袋の下に着用すると刺激性接触皮膚炎になるリスクもかなり抑えられます。どうしても使いづらい場合や細かい作業に必要な場合はニトリルという合成ゴムの手袋を使ってください。

こちらにはゴムアレルギーを引き起こすラテックスが入っていないので、アレルギー性接触皮膚炎になる恐れはありません。とはいえゴム製のものは刺激が強めなので、なるべく使用を控えるのが好ましいです。

それから、サロンでは手洗いを行う回数が多いですが、この時使う石鹸も液体石鹸(ハンドソープ)ではなく固形石鹸にすると皮膚への刺激が少なくて良いです。

液体石鹸だと必要以上に使い過ぎてしまい、本来手を守るために必要な皮脂や常在菌も流してしまいます。結果として手荒れしやすくなったり、ウイルスや細菌が付着しやすい環境をつくったりしてしまうのですしかも固形石鹸は洗浄力が高いので、頑固な汚れでも落ちやすいというメリットもあります。この機会に固形石鹸の使用を検討してみてはいかがでしょうか。

サロン内の湿度に注意する

乾燥は手荒れの始まりです。保湿をこまめに行うにしても、部屋自体が乾燥した状態だと適切な湿度を維持できません。空調設備を使う季節は特に乾燥しないように気をつけましょう。適切な湿度を保てるように乾湿計を置いて視覚化したり、加湿器を導入したりすることが効果的です。とにかく乾燥しにくい環境をつくりましょう。

個人の取り組みとしてできること

仕事が原因だからと言って、サロンにばかり改善のための取り組みを任せてはいけません。個人レベルでできることもいろいろあります。いくつかご紹介するのでぜひ今日から始めてみてください。

保湿ケアをこまめに行う

まず、手を洗ったらハンドクリームを塗ってこまめに保湿を心がけましょう。お客様に直接触れることを考えると、べたつかないサラサラしたクリームが良いですね。また、香りがついているものは避けた方が無難です。

ハンドクリームを塗る暇がないという人は、自宅でオイルケアをすると良いと思います。それから、ハンドスクラブを使って古い角質を除去して素肌を整えるのも良いですね。角質が柔らかくなっているお風呂上がりに使うと効果的です。より肌に優しいものを求めるならばゴマージュも良いですよ。

過去コラム「サロンの新メニューにオススメ!海外で話題のフットケア」でゴマージュや角質ケアの重要性について説明しています。興味のある方はぜひこちらもご覧になってください。

既に乾燥等でひび割れている人にとっては、尿素入りのハンドクリームやスクラブは沁みて痛いと思います。そのような方にはワセリンがオススメです。多少べたつきますが、保湿力が非常に高く沁みることもありません。サロンで使うのは難しくても、自宅でのケアにいかがでしょうか。

ちなみにハンドクリーム等を使う前に化粧水を使うと水分がしっかりと吸収されるので、小さな容器に入れて持ち歩くと良いですよ。

作業時には布製の手袋を着用する

事務作業や車の運転など、化学物質の心配がない時であっても、手への負担を極力避けるために布製の手袋をした方が良いです。薄手のもので構いません。仕事中以外でも家事をする時など、普段から手袋をしましょう。何かものに触れる際に手の皮脂を奪われてしまうからです。すると手荒れが加速してしまいますし、そもそも美容師やエステティシャンにとって手は大切な商売道具と言えます。

手荒れの有無に限らず普段から手を労わることは仕事のうちです。このくらいなら大丈夫だと過信せず、手袋を日常使いしてケアを怠らないようにしましょう。

清潔さを保つ

特にアレルギー性接触皮膚炎の場合に有効な方法が、清潔なサロンを保つことです。たとえば、薬剤を扱う仕事自体はしていなかったとしても、シャワーヘッドやタオル等にアレルゲンが付着している可能性があります。

したがって、自分が何か使ったらその周囲も含めて丁寧に掃除することが必要です。この意識をサロンの全員が持つだけでもずいぶんと発症リスクは減りますし、サロン内を清潔に保てるのでお客様からの印象も良くなって一石二鳥です。

食事に気をつける

外から働きかけるだけでなく、食事にも気をつけて内面からケアすることも非常に大切なことです。

血液の循環を良くするビタミンE、皮脂の分泌を調整するビタミンB2、細胞の新陳代謝を高めるビタミンB6、皮膚の発育を促進するナイアシン、傷の治りを良くするパントテン酸、コラーゲンの生成を助けるビタミンC

手荒れに効果的な栄養素だけでもこんなにたくさんあります。肌の調子を整えるこれらのビタミン類や、皮膚の材料となるたんぱく質をバランスよく摂取することで手荒れの改善・防止が期待できるでしょう。魚介類や肉類、豆類、緑黄色野菜を中心とした食事で体の内側からケアすることが重要です。一度に十分な量の栄養素を摂取するのが難しい場合は、健康機能食品やサプリメントで補うと良いでしょう。

参考:公益財団法人 日本食肉消費総合センター「それぞれのビタミンの特徴と働きは?」

皮膚科を受診する

手荒れの度合いがかなり進行してしまって個人で対応できるレベルでない場合は、迷わずに専門医療機関を受診しましょう。また、上記のような手荒れの改善に取り組んでもなかなか効果が出ないこともあると思います。そのような場合は単なる手荒れではない可能性もあるので、速やかに病院へ行って診断を受けてください。

そして、専門医の指導通りに過ごし、処方されたステロイド薬などを用法・用量に注意したうえで使うことが大切です。手荒れは時間が経つほどに悪化していくケースが多いので、異常に気付いた時点ですぐに皮膚科へ行って専門医の指示を仰いでください。

手荒れには根気強いケアと普段からの対策が大切

今回のコラムでは手荒れをテーマに扱ってきましたが、美容業界に携わるのであれば季節を問わず対策が必要になります。この機会にぜひご自分の手を労わってあげてください。たかが手荒れと侮っていると、そのうち仕事にも支障をきたすことになって今の仕事を泣く泣く辞めざるを得ない状況になってしまうかもしれません。

また、手は一番使う頻度が高い体の部位であり、年齢が最も出やすいところだとも言われています。日々のお手入れが10年後、20年後にも影響してくるでしょう。今からエイジングケアも兼ねてしっかりケアすることで、ずっと美しくハリつやのある手を保てます。

手荒れのためだけでなくエイジングケアにもなると思えば、多少の手間や不便さはなんてことなくなるのではないでしょうか。綺麗な手のためにも今日から少しずつ対策していけると良いですね。